ぼくはわりと長い浪人時代を経てきている。 昭和51年春から昭和56年春までの5年間だ。 進学校だったにもかかわらず、ぼくは高校三年になっても進路が定まらなかった。 担任から「しんた、お前はどうするんか? 進学か?就職か?」とよく聞かれたものだった。 そのたびにぼくは「さあ?どうしましょうか?」と、他人事のような返事をしていた。 親が進学を希望していたので、とりあえず進学希望としたものの、音楽と文学にうつつを抜かしていたぼくに、合格する大学なんてあるはずもなかった。
課外授業や模試なんかも一切受けたことがなかった。 担任も、ぼくがいつもボーっとして勉強してないのを知っていたので、一般受験は無理だと思ったのか、F大の推薦入学を薦めた。 「どうだ、推薦にしてみらんか?するならすぐ手続きをとってやるぞ」 ぼくは『どうでもいいや』という気持ちで「じゃあお願いします」と言った。 「そうか、そうするか。よし、それなら・・・。・・・・・締め切りは今日やった。まあ、一般受験で頑張れ」 担任はその後、ぼくの進路について、とやかく言わなくなった。 一般受験と決めてからも、ぼくは何も勉強しなかった。 相変わらず、課外も受けずに、早く家に帰ってはギターのコピーや作詞作曲などをしていた。 そんなことをしながら三学期になった。ぼくの関心事は「大学に受かるか」よりも「無事卒業できるか」だった。 『卒業できないと、カッコ悪いな』ぐらいの感覚で、ギターを引く合間に少し勉強した。 何とか卒業は出来た。
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