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受賞時のタイトルは、「亡兆のモノクローム」。 たしかに硬質なタイトルだが、内容を想えば嵌る。 亡びの兆し、そのほころびが痛い。
長崎の原爆投下場面から始まる歴史ミステリ。 主な舞台は現代だが、あえて歴史と呼びたい。 著者本人は実体験として知らない「過去の戦争」に 生きた人々の生々しい記憶をたずさえ、 この不穏な時代への警鐘を鳴らす。
綿密な背景の積み重ねと、 計算された文章、にじみ出る哀感。 意図してにじみ出したはずなのに、 じわっとにじみ出してくるような。 著者は、仙台在住のコピーライターだという。
コピーライターの書いたミステリ、 しかも地方(都会ではあるが)の人というので、 どんな視点で書いているのか興味もあった。
仙台の骨董市で、広告会社に勤める主人公、 日下哲が手に入れたのは、 骨董の渓流釣り用リールと、 そして一缶の古い謎のフィルムだった。
半世紀を越え、隠されていたモノクロ映像は、 「日本」そのものの覆われた過去の記憶。 やがて真実が暴かれる時、あの時代への杭が打たれる。 流れる血は、誰のものか。
あの時代と現在は、まぎれもなくつながっている。 忘れてしまったはずのことが、 あるときふっと、顔を出す。 伏流水となった流れが、どこかで地上に出るように。 流れは決して、砂に吸われたわけではなかった。
もういちど、あふれだそうとして。 あるいは何かを、うるおそうと。 (マーズ)
『滅びのモノクローム』 著者:三浦明博 / 出版社:講談社
2002年01月22日(火) 『いまやろうと思ってたのに…』(その2)
2001年01月22日(月) 『ザ・マミー』(上・下)その2
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管理者:お天気猫や
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