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エルキュール・ポアロとハロウィーン。
去年だったか、シィアルに紹介を頼まれて忘れていて、 今年になってまたこの本をやおら探したところ、 幸運にもその日に見つけました。
ポアロとは旧知の探偵作家、オリヴァ夫人が 招かれた、イギリスのハロウィーン・パーティーで ひとりの少女が殺されます。 しかも、ボビング・アップルのおけで溺死させられて。
少女を殺した人物は? すでに老境のポアロは、オリヴァ夫人の依頼で、 事件の捜査に乗り出します。
読んでいると、発表されたのは1969年というのに、 まるで昨今の日本の世相のようで身震いしました。 犯罪の加害者と被害者の低年齢化、 精神鑑定が必要な犯罪者の増加・・・
そもそも、ハロウィーンパーティーの様子が 出て来るという理由で探したのですが、 確かに、スナップドラゴンという危険な火遊びも 出てきて興味深かったです。 イギリスにも、本格的なハロウィーンがあるの? と思われるかもしれませんが、このパーティーは、 特別念入りに計画されたものだったのでしょう。 ただし、殺人のあったこのパーティー、 ポアロ自身は参加していません。
当日のだしものは、証人によって多少順序が違うのですが、 箒の柄の審査(賞品付き)、風船を突いたりぶったりするゲーム、 リンゴ喰い競争(ボビング・アップル。障害物競走 と呼んでいる証人もいます)、 小麦粉ゲーム、 電灯が消えるたびに相手を変えるダンス、 女の子が暗い部屋で鏡をのぞき未来の結婚相手を見る遊び、 食事のあとに「スナップ・ドラゴン」です。
スナップ・ドラゴン/ぶどうつまみゲームとは、 ブランディをかけて火をつけた干しぶどうの大きな皿から、 焼けたぶどうを手でつかんで食べる遊び。 灯りを消して、炎が消えるまで楽しみます。 むしろクリスマスを連想させるようなもの─と書かれています。
小麦粉ゲームというのは、 コップに入れて押し付けた小麦粉をお盆に伏せて山を作り、 その上に6ペンス硬貨を置き、みんなで6ペンス玉を 落さないよう、順に少しずつ山を削り取ってゆきます。 玉を落したらアウトで、最後に残った人が、6ペンス もらえるというもの。
本作は、クリスティー79歳の作品。 オーソドックスな謎解きの展開でありながら、 マクベス夫人、庭園の薀蓄、ウンディーネ、生け贄の儀式、 「オオカミが来た」のうそつき少年(少女)など、 イマジネーションゆたかなモチーフが多く登場し、 犯人探しだけでなく、全体がこわ楽しい「ハロウィーン」 のムードになっているようです。
なお、原題では『Hallowe'en Party』とつづっています。 (マーズ)
『ハロウィーン・パーティー』 著者:アガサ・クリスティー / 訳:中村能三 / 出版社:ハヤカワ文庫1977
2001年10月17日(水) 『民子』
2000年10月17日(火) 『TEA<茶>の本』
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管理者:お天気猫や
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