泥棒〜〜〜!!
今日も今日とて朝バイト。 正月休みが明けたせいもあって今朝はお客さんが誰も来なく、かなりゆったりしている。 「今日は掃除でもするか」 忙しい日はレジ・品出し・値付け・接客とに追われ続け、お店の中の整理整頓がちっともできない状態が続いてなにもできないのだ。最近そんな状態がずっと続いていて、掃除はしているけれど細かい所の掃除や陳列が全然できていなかった。今でも立っている場所から見える所の文具コーナーが壊滅的雪崩を起こしている(汗) 「うし!今日は徹底的にやるぞぅ!!」 とりあえずは洗濯、トイレ掃除、床のはき掃除からはじめて、カウンターの雑巾掛け、ショーケースのガラス磨きなどをする。 「さて、今度は家具コーナーのドレッサーでも磨こうかな」 という時にそれは起こった。 いや、正確には「見えた」のだった。それは人の脚だった。 わたしのいる場所からは家具が間にあって茶色のズボンの脚しかみえなかった。 けれど、それはレジのカウンターをまたぐ脚で、最初は 「またMさん(社員)かA君(バイト)がふざけてなんかやって〜(-_-;)」 とか思っていたのだけれど、すぐ違う事に気が付いた。 その「脚」の持ち主は御丁寧に外に出た後、中の貴金属ショーケースの扉を閉めていったからだ。 店の人間なら出る前に閉めるし、だいたい今日MさんんとI君は黒のズボンを履いていて……。 ……じゃあ、アレは、誰?
ここここれってーーーー!!
一瞬頭が真っ白になったが、おいらは店員であることをすぐに思いだし(苦笑)、「脚」を追いかけた。 「お客様」 「脚」は何事もないように気だるそうにこちらを振り返る。「脚」は若い茶髪の男性だった。 「あのう、お客様」 わたしはできるだけニッコリと微笑みかけたが、たぶんかなり切羽詰った顔をしていたのだろう、向こうはこちらが何を言いたいかわかったようだ。 ポケットに手を突っ込むとそこから取り出した何かをこちらに渡し、足早に店の外に出てしまった。 見ると、それは7万円相当の18金のネックレスだった。 おいらもつられて外にでた。
「Mさーーーーん!!」 おいらは大声など滅多に出さないが(賢ちゃん関係は別(苦笑))、この時はあらんばかりの声で叫んだ。とにかくおいらひとりではどうにもできないのだ。 Mさんは何が起こっているのかわからず、奥のカウンターからゆっくり笑いながら近づいて来た。 「なんですか、もといっちさん」 「いいから!来て」 奥にお客さんがいるのが見えたので、下手に騒がない方がいいなと判断し、とりあえずMさんが出てくるのを待って素早く事情を話した。 Mさんはすぐに理解してくれ、その時駐車場から車を追いかけていった。
…結局は、おいつけなかった。
その後、わたしは社員の人全員に事情聴取をされたけれど、結局事がどうで、犯人が全くの未遂であるかどうかなどははわからなかった。 とりあえず、渡されたネックレスは無事だった、としか言いようがない。
そして、おいら達は今後「レジをなるべく空けない」ことと「空ける時は声をかける」ことを言い渡されたのだった。 その日から例の扉には錠がとりつけられた。(っていうか今までなかったのが不思議なくらい)
「それにつけても小心者な犯人ですね」 とバイトのA君。 「普通、そういうときは返したりせず、なりふり構わず逃げるモンです」 ああ、成程ね。確かに。 「わたしも返してくれるとは思わなくて呆然としちゃった…。扉もご丁寧に閉めていったし」 「指紋バリバリ残ってますよね。俺なら手袋して、猛ダッシュで逃げるけど──」 「おいおいΣ\(-_-;)」
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