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ふと窓の外に目をやると水平線が広がっていた。 そういえば、水平線を見るのは久しぶりの気がする。
線路沿いでは梅の花が咲いていた。 知らぬ間に季節は確実に動いている。 柔らかな日差しが疲れた体を包み込む。 思わず眠気に誘われる。
帰りの電車は混んでいた。 車内は観光客で溢れ、仕方なくデッキに立つ。 団体で温泉に来たりする集団と言うのは どうしても好きになれない。旅の興を削がれる気がする。 けれど、そんな彼らもこの時ばかりは窓の外の景色と コントラストをなしていて、いいアクセントとなっている。 地平線を見てしばし見とれるにも、俗っぽさを体現している 彼らが必要なんだ。
******************************************************** 今日の午後、帰京し夜の面接までしばらくの時間があったので、 キャンパスに立ち寄る。サークルの後輩達が 新入生向けのビラの印刷に励んでいた。
思えば1年前のこの時期、あまりのハードさに入学式前日に倒れ、 さらに飲んだ薬の副作用で点滴まで受けたことを思い出す。 周りの皆の協力のおかげで多くの新入生が入ってくれたことを 嬉しく思う。
キャンパスを辞し、すぐ近くの母校の前を通ると、 吹奏楽部でお世話になった指揮者の先生がいた。 しばし話し込む。
母校は創立100周年を期に、この春校地を移転する。 今は引越し準備の真最中らしい。 新校舎は設備も充実し、広い校舎でのびのび過ごせるとのこと。
けれど、コンピュータが用意されたり、広いグラウンドがある校舎より 冷暖房のない狭い校舎でも「この地」で、どこか懐かしくそれでいて 活気溢れた「この地」で過ごす時間は何物にも代え難い時間だと思う。
冬が終わったとも、春が来たとも誰も認識しないまま、 いつの間にか花のつぼみは膨らみ、柔らかな日差しに照らされて 町を歩く人の表情も明るくなってきた。 別れの寂しさと出会いの予感に躍る心が交錯する季節。
この地に来て10度目の春はもう、 手を伸ばせば届く場所に来ている。
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