彩紀の戯言
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彩紀家がこの家に越してきて2年半になる。
コウモリ君が家の中を飛んだり、集中豪雨で悪臭が放たれたりと なかなかスリリングな土地だけれど普段は静かで住み心地はなかなかよい。
近所の住人はお互いの悪口を言いつつもとりあえず問題なく暮らしているようだ。 ウチ以外は年齢層が高いのでそれを理由に関わらないことにしているが 最近の彩紀家はちょっと悩んでいる。
玄関とは反対側の裏にあるお宅。
中学生と高校生の娘さんがいる4人家族はとっても賑やか。 夏になるとお互い窓を開けているので声がよく聞こえる。
年頃の娘さんだからねぇ。反抗期っていうのかな。
「うっせぇんだよ!!」 「なんで○★×※$Ψ☆なのよぉぉぉぉ!!」 「きぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
どったんばったんとドアを閉める音が頻繁にする。たぶん。 それとも壁を蹴っているのだろうか・・・。
ヒステリックに母親に怒鳴る娘がいても不思議はない。 自分にもそんな時期があった気もするから。
そのお宅のすぐ裏は彩紀家の庭。 雑草がぼうぼうと生えお世辞にもキレイとは言えないがいちおう庭。 いつかは「ガーデニングゥゥ」と呼べる庭にしたいと夢だけは持ち続けている。
ある日。そんな庭にタバコの吸い殻を発見した。 庭で草むしりをがんばってみるときには庭で一服なんてこともある。
もしかしてゴミ袋に入れ忘れたのかと思い最初は気にしなかった。 私と同じ銘柄のタバコだったし。
ところがウチでは吸わない銘柄の吸い殻を見つけるようになった。
そう。間違いなく裏の娘が捨てているのだ。 吸い殻の場所も彼女の部屋の下辺りが多い。
1ヶ月に1本もない。 火の始末はきちんとしてから人の家の庭に捨てているようなので 火事にならないように気を付けてくれているらしい。
吸い殻を持って裏のお宅に文句を言うのは簡単だ。 しかし。誰が捨てたかがすぐに判るような捨て方を平気でする娘である。 毎晩のように怒鳴り声が聞こえるヒステリックな娘である。
逆ギレした娘が私を待ち伏せしルーズソックスに石を詰め それを振り回されても困るではないか。
さらにはお父さんの声で「包丁持ってくんぞっ!」などと聞こえたことのある家なのだ。 殺人事件が起きても困る。
娘だけに会い、両親には言わないから「ポイ捨てを辞めてくれないか」と お願いしようかなどと考えていた。
が、けっきょく実行せぬまま今日(こんにち)に至っている。
ったく、タバコぐらい見逃してあげなよぉ。 なんでもかんでも口出しするからあんたの娘は人ん家の庭に吸い殻捨てるんだよ。 それか、捨てるときは近所の人にばれないようにウマく捨てるとか教えてくれない?
そして。吸い殻を当たり前のように拾うようになった頃。 ダンナ様が出勤する時間に人が庭を歩いているのを見たと言う。 若い男性が裏の家の方からてくてくと歩き我が家の玄関側の道路に出ていったらしい。
ご存じ無い方に説明しよう。
我が家には門がない。 お金が無いという理由もあるが車の出し入れが不便になるのもイヤだし 道路から丸見えなら泥棒も入りにくいと思い、敢えて付けることは考えていない。
さらにお金がなかったため裏側の塀はいわゆるフェンスのままである。 乗り越えようと思えば簡単にできる。
しかし。見ず知らずの人が通ったことは一度もない。 これが初めてである。
家族は唖然とし「なんだ、おまえ???」と目で訴えた。 さすがにその若者も気が引けたらしく
「あっちの道(裏の家の玄関側の道)に怪しい人がいたから こっちに逃げてきました。すみません」(ぺこり)
いや。あんたの方が怪しいんだが・・・・・。 と声に出して言うこともできず、家族はそのまま見送ったそうだ。
人間、あるはずのないことに出くわすと言葉が出ないらしい。
もちろん、その言葉をまともに受け取るほど彩紀家はおめでたくない。 言い返す度胸はないが想像する能力ぐらいは持ち合わせている。
おおかた裏の娘の部屋に両親に内緒でにーちゃんが泊まったのだろう。 家を抜け出す機会を失い、娘の部屋から1階部分の屋根に下り 我が家の庭を通り抜けることにしたに違いない。
しかし証拠がない。 頻繁に通られるのは困るが1回こっきりなら大目に見てあげようではないか。 外泊を許す親ではないだろうし、にーちゃんと長い時間を一緒に過ごしたかったのだろう。
ったく。外泊ぐらい大目に見てあげなよ。 なんでもかんでも禁止するからにーちゃんを家に連れ込むんだよ。 それか、見て見ぬ振りをしてにーちゃんを玄関から出してくれないかねぇ。
とまぁ、昨日までは憶測で済んでいた。昨日までは・・・・。
今日、私が洗濯物を干し庭を見回すと小さな袋が落ちていた。 小さな正方形の袋だ。しかもカラフル。一辺は4cmぐらい。
思わず手にとって文字を読んでしまった。
お菓子の名前は書かれてない。
「○○○○GOMU」と書いてある。
あは。ガムじゃないのかな?あはは・・・・・。
・・・・・・・・・。
当然のように封は切られ中身を出されている。
・・・・・・・・・。
使ったのね。
これであのにーちゃんは間違いなくお泊まりしたことが判った。
・・・・・・・・・・。
奥さん。あなたの娘さんは大丈夫。
ちゃんと避妊してますからね。
私は戯言に人の悪口だけ書くまいと心に決めてきた。 いくら誰のことか判らないとはいえ、ポリシーに反すると思ったのだ。
しかし。今回ばかりは許せない。
この戯言が汚れてしまうのを覚悟で書いている。
私は裏のおバカ娘が許せない。
許せる人がいるだろうか?
使用済みのモノを他人の庭に捨てるほどのおバカ娘をっ!!
証拠隠滅のために他人の庭に捨てた外袋。 使用済みの中身を家のゴミ箱に捨てるはずがない。
ちょっと見回せば見つかる位置にソレはあった。
あぁ、私のガーデニング計画が・・・。 とりあえずその場所に昨日買ってきたプチトマトの苗を植えるのは辞めることにした。
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
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