虹色過多想い |
2005年05月20日(金) 今日の呼び名はわからない |
去年の今日と同じ場所で待ち合わせする。 去年と違うのは、今年は彼が先に着いていたこと。 車は去年の今日と同じコースを走る。 去年と違うのは、車の中でふたりが手を繋いだこと。 去年の今日行ったレストランで食事をする。 去年と違うのは、初デートの場所ではなくって、想い出の場所となっていたこと。 去年の今日見た夜景を見に行く。 去年と違うのは、彼の少し後ろではなくって、ぴったり隣を歩いたこと。 去年の今日・・・それはあたしが彼に恋に落ちた日。 ふたりが初めてデートした日。 恋人は去年のデートを再現してくれた。 待ち合わせ場所から指定してくれて。 1年前のことなのに、まだ鮮明に覚えている。 去年の今日、微熱があってお布団に潜りながら「セレンディピティ−幸せな偶然−」を見ていた時に、彼から食事のお誘いのメールが来た。 今日を逃したらもう機会がないんじゃないかと、了解の返事をして仕度をしたのを憶えてる。 後からそれを彼に言うと、「あの日断られてもまた誘ってたよ」って言ってくれたけど、あたしは去年の今日がなかったら、今のふたりはなかったんじゃないかと思ってるよ。 1年前の今日。 今はあたしが働くこととなったバイト先の駐車場で待ち合わせをして、円山にある櫻月 彼の車の助手席に座って、一緒にご飯を食べて、いろんなことを話したら好きになってしまいそうでどうしようと思ったのを憶えてる。 好きになっちゃいけないってわかってて、それでもまだ一緒にいたいなって思った夜の9時。 また会いたいと、次は中華を食べに連れてってなんて言ってたな。 車を降りる時にはもう恋に落ちてしまってた。 あれから1年。 季節は同じ桜の散る季節。 1年はあっという間に過ぎたけど、変わったことがたくさんあるよ。 緊張して乗っていた彼の車の助手席は、今はあたしの指定席にしてもらったし。 カーステレオから流れる音楽はあたしが車に持ち込んだMDばかり(aikoに大塚愛にゴスペラーズに小沢健二)になった。 去年の今日と同じ黒のタイトスカートを穿いてシルバーのパンプスを履いてるあたしだけど、去年よりひとつ歳を重ねていて、運転している恋人の横顔をじっと見つめる。 あたしの視線に気付いて「どうした?」って訊ねてくる恋人に「なんでもないの」と答える。 どうもしてない。いつだってただ好きだと思ってるだけ。 1年前よりずっとずっと深く。 好きになっちゃいけないって思いながら気持ちを止められなかった去年の今日。 永い時間を考えると1年なんて短いけれど、1年彼を想い続けたことには大きな意味がある気がする。 恋人に「ありがとう」と言った。 去年の今日の恋人と、今年の今日の恋人に。 去年の今日、あたしを食事に誘ってくれた恋人にありがとう、と。 今年の今日、ふたりの記念日なんかじゃないのに、あたしにとって特別な日だと知っていてくれて、大切に扱ってくれてありがとう、と。 去年の今日と違うのは家の前まで送ってもらったこと。 いつものようにまたねのキスをしたこと。 1年前じゃ考えられなかったことだね。 去年の今日を幸せな偶然と呼んだあたしたち。 今年の今日は偶然なんかじゃない。 今日の呼び名はわからないけど。 |
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