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■ 二つ目のキュクロプスの話。
高い嶺の連なる オリンポスの山々の一つに 巨人キュクロプス達の住む国がありました。 キュプロスには目が一つしかありません。 でも彼にはどういうわけか、目が二つありました。 仲間のキュクロプス達は、二つ目の彼が自分たちの姿と違うので 除け者にしました。 彼はいつも一人ぼっちでした。 ある日、仲間のキュクロプスの一人が 「お前は二つも目があるなんて、人間みたいだ」 とからかいました。 それを聞いた彼は、住み慣れた山を離れ 人間達の住む町へと降りていきました。
町に来てみると、どこを見ても二つ目を持った生物が たくさんいます。 彼は喜びました。 でも生まれて初めて見る自分以外の二つ目の生物達に、 どうしたものかと山かげからこっそり様子をうかがっていました。 するとどうでしょう、向こうから一つ目の人間がやって来ました。 その男は顔に黒い眼帯をまいていたので、キュクロプスは自分の仲間だと 思い、声をかけました。 「おい、そこの一つ目、どこへ行く」 眼帯の男は山かげから自分をのぞく大きな男に驚きましたが これが噂に聞く巨人キュクロプスだと思い、平静を装って答えました。 「私は今から家に帰るところだ。しかし、あまりにも長く人間の中で 暮らしていたので帰り道を忘れてしまった」 それを聞いたキュクロプスは、豪快な笑い声を立てたので 辺りの地面を揺らしました。 「俺はその家から今来たところだ。お前、人間の所に住んでいたのか」 「ああそうだ」 と男は答えました。 辺りは暗くなり、二人は火を焚き近くの洞窟で一夜を明かすことにしました。二つ目のキュクロプスは、自分が何故仲間のいる国から出てきたのかを男に話すと、 あれやこれやと人間について訪ねました。 「人間は恐ろしい生物だ」 と男はキュクロプスに言いました。 「あんな小さい愚かな奴等になにができる」 キュクロプスは小馬鹿にして信じようとはしませんでした。 「そうか、信じないならそれでもよかろう。ところで もしお前が私に家への帰り道を教えてくれたなら、俺はお前を 一つ目にしてやることが出来る」 と男が言いました。 「なんだと、そんなことできるものか。でも聞いてやる言ってみろ」 「まずは家の場所が先だ」 男に言われキュクプロスは少し悩みましたが、 教えてやりました。 「さあ教えたぞ。次はお前の番だ」 男は準備に時間がかかると言って、キュクロプスに先に眠るようにいいました。 よく眠れるように酒も与えました。 そのせいかキュクロプスはすぐに横になってしまいました。 「なぁ相棒、そういや宝物はどこに隠したっけなぁ」 心地よいまどろみの中、キュクロプスはうわごとのように 三本の川が交わる山の中と答えました。
キュクロプスが寝入ったのを見ると、男は町に飛んで帰り町中の人間を集めて 三本の川の交わる山に行き、キュクロプスの宝を奪いました。 それから町で一番強い槍を持ち、その矛を火で真っ赤になるまで焼き、 キュクロプスの眼目掛けて突き刺しました。 地獄の底から湧きあがるような恐ろしい声を上げ、キュクロプスは 叫び男を呼びました。 男は岩陰に隠れながら 「人間だ!人間が来た!」 と大声で叫びました。 見ると山のなかに、たくさんの人間達が松明を持ってこちらの様子を うかがっているのが見えます。これは男が宝物を奪うのに集めた 人間だったのですが、キュクロプスは自分を殺しに来たのだ思ったものですから キュクロプスは吃驚して、 「俺はこんな恐ろしい所はたくさんだ」 と叫ぶと一目散にキュクロプスの国へ帰ってしまいました。
二つ目のキュクロプスは、片方の眼がなくなって一つ目になり、 今も仲間と一緒に暮らしています。
2001年04月03日(火)
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