+シコウカイロ+
此花



 壁の手

ふと横をみると手が生えていた。
私の部屋の壁からだ。
ノックしてみたが返事はない。
壁に大穴をあけて寒い思いもしたくないので
そのままにしておいた。
外は雨。
ジメジメする空気は重くて
カビでも生えそうな勢い。

カビ・・・

ふと壁の手を見る。
カビてはいないようだ。
そういえば生きているものには
そういったものは寄生できないという話を聞いたことがある。
じゃあ少なくともこれは
ユニークな人が、私の部屋に手を突っ込んでいる
ということになるのだろう。
脈を取って見るが、ない。
そんな気がする。
まぁいっか。
きっと低血圧か何かだろ。

夜中に何かカタカタと音がした。
なんだろうと思って
見上げたら、壁の手が揺れている。
出て行くのかなぁ〜と思ったら
手は壁の向こうに消えていった。
その日は
電気を消して寝直した。

次の日
友達にそんな話をして
ふと思い出したのだが、
私の部屋はちょうど端なので壁の向こうは
外だ。
しかも私が住んでいるのは14階。

きっとロッククライビングかスパイダーマンだったんだろう
ということになって
今も同じ部屋でこれを打っている。


2001年04月04日(水)
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