2003年10月23日(木) |
『プリズム・パープルの…』(TS小ネタ。シグナル×コード) |
「コ〜〜ド〜〜〜」 「やかましい。俺様は眠い」 「いやだからそれについては文句はないんだけどさ……」 「…ならそれで良い。寝る」 「コードってばー!」
アンダーネットには不似合いな、純和風のコードの隠れ家。 修行がてら、シグナルはよくこのコードの家に遊びに来ていた。 しかし家主はコードである。 遊びに来た客であるはずのシグナルに、茶を煎れさせるわ、菓子は催促するわ、しかもそれが不味いとがみがみと文句をたれ、部屋の掃除に始まって庭の手入れまでさせられている。体のいい「使用人」扱いであった。
それでも、オラトリオに言わせれば「あの家に入れてもらえるだけマシ」だそうだ。 シグナル以外は、エモーションくらいしかコードの家には入れないのだ、という。理由が思い付かなくて、首をかしげていると、カルマがふわり、と微笑みながら答えてくれた。
「それはそうでしょう?『パートナー』ですから」
「え……でも俺はまだまだ未熟者のひよっこだって、コードが…」 「未熟者がなんです?経験不足がなんです?」 ざくざく、と言葉の刃が刺さる。やっぱりカルマって、さり気にキツイ。 「足りないところがあるからこそ、お互いに補うことができるのでしょう?それこそが、『パートナー』ではないですか?」 「うーん……確かに、俺はコードに補助されてばっかだけどさ。…補い合うって……」 シグナルはふう、とため息をついた。 誰よりも、何よりも強いコード。経験不足な自分を常にサポートしてくれるコード。いつも強気で、いや本当に強くて……鳥型のコードも。電脳空間のコードも。「細雪」を操る彼の前に立つ存在など、誰もいない。 「あんなに「強い」コードに……何か、俺ができる事なんて、あるのかな?」 呟きにも似たそれに、カルマはふと、卵白を泡立てていた手を止めた。 「さぁそれは……コード本人に聞いてみてはいかがですか?」 「……そんなの怖くて聞けるかよ〜」 「はははは……」
……そして、自分で宣言した通り、シグナルはコードに何も聞けずにいる。 そしてコードは、隣に座るシグナルの、畳に広がる髪を枕に、すやすやと眠っていた。その右手には一房、じゃれるようにプリズムパープルの髪を絡めたままで。 最近の、コードの癖だ。 昼寝をする時は、決まってシグナルを横に座らせ、床に広がるプリズムパープルの髪を枕にして眠る。 動こうとすると怒るし、髪の毛をひっぱられて痛いので、シグナルはコードが昼寝する間、動くことができない。戦闘型のシグナルにとって、それは少々苦痛なのだが……怒らせるとやはり怖いので、結局は、この状態を受け入れている。
それに。
眠っているコードは、ものすごく無防備なのだ。 開かれていれば、冷気を伴うような鋭い目が伏せられているだけで、その印象はかなり柔らかく、華奢なものになる。 細い肩。華奢な手足。雪のように白い肌。 顔も首も、びっくりするほど小さくて、細くて。 あんなに強くて、容赦がなくて、色々な事を体験して知っている、自分よりはるか年上の彼なのに。
「……ん………」
身じろぎしながら、その感触を確かめるように髪に頬をすりつけるコードは……。
(…かわいい……かも………)
そしてシグナルは自分の思考にハッとして、こんな事考えたなんてバレたら、コードに殺される!!と大マジで青ざめ、慌てて視線をそらす。
…しかし予想したような反応は何も起こらず。 コードは眠るばかり。
シグナルは、そんなコードを見つめていた。
――今なら、聞けるかもしれない。
「……ねぇ……コード」
でも、聞えないように声をひそめて。
「俺はコードに、何ができるんだろう?」
もちろん、答えは、ない。
コードは……今ようやく、「生きている」パートナーのそばにいるコードは、プリズムパープルの色をしたシグナルの髪を枕にしたまま、眠っているのだから。
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