2004年02月09日(月) |
『チョコレート・オペレーション3』(女の子ヒカル小ネタ) |
ヒカルが奈瀬たちを案内したのは、ログハウス風の造りをした、中庭の緑が落ち着いた印象を見せるカフェだった。 慣れた風に中庭が見える窓際に席をとると、ヒカルはさっさと自分のスパイシーカレーセットを頼んでしまう。 「ごめんね〜。マジおなかへっててさ」 にこにこ微笑みながら、ヒカルはメニューを広げ、このカフェのおすすめだという何種類かのチャイを示してみせた。 ヒカルの話に奈瀬はジンジャーチャイ、桃李はマサラチャイ、ひろみはカルダモンとクローブのチャイをチョイスした。
「……で?話って、なに?」 出されたカレーをぱくつきながら、ヒカルは彼女たちに視線を向けた。 「2月に女の子が集まってする話といえば、決まってるでしょ」 こくこく、と奈瀬の言葉に他の2人が頷く。 丁度彼女たちの頼んだチャイが運ばれてきて、3人は持ち手のない、まるで抹茶茶碗のような大きなカップに驚きながら、その温かさと香りにほっと息をついた。 その間も忙しくカレーを食べていたヒカルはふと食べる手を止めて、スプーンをくわえたまま首をかしげる。
「……2月に決まってる話って、なに?」
「あんたねぇ……」
奈瀬はハンカチごと大きなカップを両手で持ち上げ、ジンジャーの香りが豊かなチャイを一口飲むと、ごとん、と少々乱暴にカップを置いた。
「あんた、ここのカフェには緒方十段と来たんでしょ?!」 「うん」
都心にありながら、中庭の緑が落ち着ける、木の床、木のテーブルの洒落たカフェ。
「緒方十段と、よく一緒にドライブに行くって、本当ですか?」 「うん」
対局の後、緒方が愛車のRX-7にヒカルを乗せて去ってゆくのを桃李も見たことがある。 それほど仲が良いのだ。 ひろみが身を乗り出した。 ずい、と奈瀬も桃李もヒカルに詰め寄る。
「去年のバレンタインに、緒方十段にチョコレート、贈ったんですよね?!」 「ううん」
………なに。
この時、窓際のテーブルの席の3人の少女たちは固まった。 もぐもぐと、ヒカルがデザートのミルクプリンをほおばるだけで。
「…進藤」 「なに?」 「今の話…マジ?」 「……うん」
……3人いっしょに、せーの
「「「何でチョコレート贈ってない(んですか)
のよ??!!」」」
あまりの3人の剣幕に、ヒカルはきょーん?とした様子で目を丸くした。 「ねぇねぇ」 そして大マジで言ってのけたのである。
「なんでオレが緒方さんにチョコあげるの?」
ヒカルの言葉に、少女たち3人は、器用にも各自のカップを避けながら、机になついた。
「これじゃ全然参考にならないぃぃぃぃぃ〜〜〜〜」
…という、悲痛な叫びを上げながら。
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