食パンにアカシアのはちみつをたらして 紅茶をのんでいたら ふっとおもいだした。
小学校高学年の頃。 やたらといたずらをしたかった頃。
担任の男の先生に、 “せんせえ〜せんせぇのうたききたい〜!” と何度もせがんだ。 うたをうたいそうにない先生だったので、 おもしろそうだとおもったのだとおもう。
先生は“だーめーや”と、 何度もことわってきたのだが、 しつこくせがんでいると、 ある日、 誰にもきかせない、 という約束でカセットテープをくれたのだ。
そのテープ。 家にかえってラジカセできいてみると、 石原裕次郎の『赤いハンカチ』が アカペラではいっていたのだ。
“アーカシヤの〜花の〜したあでぇ〜 あなたがそっとぉ 涙をふいたぁ 赤いハンカチぃよ〜”
なんかなんかとてもおもしろかったのだ。 なんでなんでこのうたなのか! しかもアカペラで! わたしひとりではもったいない。 重要な秘密を握った探偵の気分。
早速次の日 その先生の授業の前に 黒板消しをドアにはさんで 教卓の横にそのテープがはいった ラジカセをセットして 先生が教室にはいって 黒板消しにおどろいた拍子に ラジカセが大音量でなるようにしたのだ。
なんかいまおもえば いやらしいいたずらしてたものだ。 自分がやられたら 傷つくかもしれない。
先生は “誰にもきかせたらだめって約束したがいね” と無表情でわたしにいった。
わたしはいたずらをするというコーフンと 先生の約束をやぶってしまった…という罪悪感と なんだか複雑な気持ちになったのをおぼえている。
あの頃は先生に対して やたらといたずらをしていた。 そういや チョークの中を彫刻刀で掘って 中にピーナツをしこんだこともあったっけ。 あれはおもしろかった。
だってチョークのなかから ピーナツだよ!
アカシヤの花のはちみつで、 こんなことをおもいだすとは。
そんなことをおもえば わたしも随分オトナになったものだのう。
|