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 北風のうしろの国/ジョージ・マクドナルド

『北風のうしろの国』/ジョージ・マクドナルド (著), 中村 妙子 (翻訳)
文庫: 488 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 早川書房 ; ISBN: 4150203989 ; (2005/09/22)
内容紹介
「北風と一緒なら誰だって寒くなんかないのよ」─美しい女の姿をした北風の精は、ダイアモンド少年を幻想的な世界へと誘った。夜のロンドンの空へ、嵐の海上へ、そして北風のうしろの国へ・・・。その不思議な国から戻った少年は、想像力の翼を広げ、産業革命期の生活に疲れた人々に、優しさを取り戻させてゆく。C.S.ルイスやJ.R.R.トールキンらによって開花した英国ファンタジイの、偉大なる先駆者による古典的名作。



以前に原書で読み始め、あまりに暗くて、寒くて、怖いので、途中でやめていたものだが、実はそうでもないのか・・・と思っていた矢先、やはりそうだったかという感じで読み終えた。

なぜなら、「北風のうしろの国」とは、死後の国のことだからだ。天国だか地獄だかわからないが、主人公の少年ダイアモンドが「見た」という話を信じれば、天国のようなところなのだろう。

そして、はっきりと書いてあるわけではないのだが、北風は「死神」と同義であるようなのだ。とすれば、ずいぶん前からダイアモンド少年は、死神に狙われていたことになる。

それにしても、夜中に巨大な女の人の顔が現れるなんて、それがどんなに美しかろうが、とても恐ろしい。まさにホラーだ!それでも、全く恐怖を感じず、北風を信じ、会うことを楽しみにしていたダイアモンド。結局死の国に連れて行かれるとも知らず、何の疑いも抱かず、純真で穢れのない少年のまま、とうとう「北風のうしろの国」に連れて行かれてしまうのだ。

私がダイアモンドだったら、「北風、騙したな!」と怒り狂うところだが、ダイアモンドは、そこに行けることに、むしろ喜びさえ感じていた。「死ぬ」などということは、かけらさえも思っていなかった。彼にとっては、生きることも死ぬことも、たいした違いはなく、何事にも恐怖など感じていなかったのだ。もっとも、天国のように楽しいところに行けるのなら、死ぬことも怖くないのかもしれないけれど。

これはファンタジーの古典で、剣や魔法といったものには一切関係がない。宗教的な側面もあり、「死」についての哲学的な物語とも言える。また、心の美しいダイアモンドに接する人々が、それに感化されて良い人間になっていくのも、少々教訓的ではあるが、自分もそんな人間になれたら、と素直に思えて感動的でもある。

2006年01月24日(火)
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