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 ブロークバック・マウンテン/アニー・プルー

『ブロークバック・マウンテン』/E・アニー・プルー (著), 米塚 真治 (翻訳)
文庫: 95 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 集英社 ; ISBN: 4087604977 ; (2006/02/17)

内容(「BOOK」データベースより)
1963年夏、ワイオミング州ブロークバック・マウンテンで出会ったイニスとジャック。野営しながら羊の移動牧畜の仕事をする間の芽生えた親密さは危険な一線を越えた。4年後、互いに募らせた思いは一気に噴出する。タブーを犯した真率な愛は世間や家族の目を逃れた大自然の奥深くに隠れ家を求める他ない。米西部を背景に同性愛の悲劇を描いた2006年ゴールデングローブ賞4部門受賞映画原作。


レイトショーで泣く

新宿武蔵野館にレイトショーを観に行った。アニー・プルー原作の 「ブロークバック・マウンテン」。内容うんぬんというより、カウボーイ映画というのに惹かれて観に行ったのだが、まさにカウボーイがいっぱい出て来て最高!脚本がラリー・マクマートリーというのもすごい。

というのは話半分として、実はこの映画はホモの映画で、怖いもの見たさみたいなところもあったんだけど、同性愛というのはさておいても、人間が人間を愛するということの喜びや苦しみが、ひしひしと伝わってくる素晴らしい映画だった。★5つです!

個人的にはストイックなイニス(ヒース・レジャー)が好き。言葉ではうまく言い表せないのだが、とにかく映画を見てもらえばわかる。「自分で解決できないことは我慢せよ」というアニー・プルーの信条が、そのままイニスに乗り移っているみたいだ。

映画の中のロッキー山脈の景色も素晴らしいし、音楽もいい。最後にウィリー・ネルソンの「He Was A Friend Of Mine」(http://www.wisepolicy.com/brokebackmountain/top.html のSOUNDTRACKページで聞けます!)を流すなんて、やられた!という感じ。もうこれだけで泣き!もちろんその他の曲もいい!

「He Was A Friend Of Mine」の「Was」に注目。過去形になっているのがなんとも悲しい。もう涙が止まらなくて、嗚咽をこらえるのに苦労したほど。性別を超えて、こんなに深く人を愛せるのかと、本当に感動した。

というか、これは男だったから良かったのかも。それも言葉少ない無学なカウボーイだったからこそ、言葉に表せないもどかしい気持ちが、少ない言葉の中から溢れてくるのが感動したのだと思う。これが饒舌な映画だったら、ちょっと白けたかもしれない。

それと、愛には関係ないんだけれど、イニスがずっと貧乏で、不器用で、自分はカウボーイしかできないみたいな、そんな生活を送っているのにもなんだかしみじみさせられて、それにも涙してしまった。

いい映画だったよ、本当に。劇場を出る時には、パンフレットはもちろんのこと、サントラのCDと原作本まで手にしていた。本のほうがいいんじゃないかな?と思っていたけれど、映画は映画で素晴らしかった。


原作 『ブロークバック・マウンテン』

映画「ブロークバック・マウンテン」の原作を読んだ。アニー・プルーは、これも映画になった『シッピング・ニュース』しか読んだことはないが、今回の作品を読んで、つくづく上手い作家だなあと思った。

この作品は量的には私の苦手な短編だが、長編を1冊読んだくらいの満足感があって、短編というものの意識が大きく変わった。優れた短編は、それだけの短さでも、十分に人生を語ることができるのだなと。

わざわざ映画と本を比較することもないが、泣きたい人は映画をどうぞという感じ。本も十分に感動できるけれど、プルーはもっと覚めた目で淡々と書いているので、じっくり読まないと、言外や行間で語っていることがわからないかもしれない。

つまりカウボーイと一緒で、余計なことはなにも言わない。書いていないのだ。私も映画を先に観ていなければ、細かい気持ちの動きなど、全然気づかなかったかもしれないなと思う。

米塚真治氏の翻訳に批判もあるようだが、個人的にはとても良かったと思う。淡々とした語りは直訳ではなくて、アニー・プルーの文体がそうだからだと思うし、会話もさりげなくて良かった。黒原敏行氏のコーマック・マッカーシーみたいで、私はとても好き。

もともと短編だから、100ページにも満たない薄い本で、紙質を厚くしたり、字を大きくしたりして、なんとかページ数を増やしているが、それでもこの本は大事にしたい1冊だ。ぜひアメリカの国立公園に持って行って、雄大な景色の中で読んでみたい。

2006年05月05日(金)
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