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観劇三昧その一 - 2003年10月12日(日) 本日は、恐らく2年以上振りとなる新谷さん(サークルの先輩)の舞台を見に行った。新谷さんは私が所属したサークルの45代目の会計をやっていた方で、卒業後は柄本明が座長である東京乾電池に所属している、所謂「芸人」である。最近は新谷さん自身、あまり舞台には立っていなかったようなのだが、この秋の連休で東京乾電池内の若手ユニット「ヤニーズ」の第六回公演に出演することになったとの情報を、後輩野中から得た。因みに「ヤニーズ」とYahooで検索してみると、ジャニーズばかり出てきやがる。これを狙っているのか否かは分からないものの、例えば「2ちゃんねる」の演劇掲示板でのヤニーズの評判は高い。 劇場は下北沢の小劇場である。今回は彼女を誘ったのだが、下北沢はウチからだと明らかに電車で行く場所である。というより、どこからでも電車で行く場所だと思うが…私も当然電車で行こうと思っていた。しかし、昨晩土曜出勤から帰って来て(しかも終電逸して途中からタクシー)、インターネットを見ていたら、こんなものが目に入ってしまった。 濱マイクの事務所が消える3日間<シリーズ3本立て> 横浜随一の風俗街を有する黄金町に、横浜日劇と言う映画館がある。ここは普段は洋画をリバイバル2本立てとかで上映している場末の映画館であるが、永瀬正敏主演で、当時「単館上映映画観客動員数史上最高」と言う金字塔を打ち立てた「濱マイクシリーズ」を上映し、かつその舞台にもなっている、ファン溜飲の「濱マイクの聖地」でもある。濱マイク探偵事務所のセットは横浜日劇に残されていたが、今度二階部分(映写室と探偵事務所のセットがあるフロア)を改装することで、何とこの事務所セットが消えてしまうらしい。そのメモリアル企画として、この三連休で改めて濱マイク三作の上映、並びに最後の事務所見学の機会が持たれると言う。 これを逃すわけには行かない。例えば私が北海道に住んでいても、これを知ったら三連休に横浜に訪れるであろう企画なのに、横浜に住んでいる私が行かずしてどうするんだ、となるのは当然である。 ただ、これを最後まで観ると、映画館を出るのが22時になってしまう。彼女とメシ食ったりしているうちに、昨晩同様電車が終わってしまいかねない。 という訳で、昨晩の休日出勤⇒タクシー帰りと言う悪夢を繰り返さないために、車で出かけた。ハッキリ言って、都内に車で行くのは得策ではないのは百も承知であるのだが…。 さて、車で家を出た私だが、順調に下北沢までは到達するものの、駐車場などまるで見つからない。毛管路地が張り巡らされている下北沢で、しかも休日で狭い道は人がたくさん。こんな道を車で通るのは無謀であるが、そんな道でもデカいベンツが走っていたりで迷惑千万である。しかも踏み切りの前で停めるなバカ。 結局隣の世田谷代田周辺に結構ある駐車場の一つに停めて、電車で下北沢に向かうというバカな行為をしてしまう。 彼女はすでに下北沢に到着しており、劇場にまで着いていた。まあ、劇場は駅前だが。 喫茶店で時間を潰し、本多劇場グループの一小劇場である、下北沢OFF・OFFシアターに向かった。ここは以前来たことがある。 彼女にとって、このような小劇場で舞台を観ると言うのは初めての経験である。といっても、私だって新谷さんが劇団員をしていなければ、恐らく観ることは無かっただろう。私は新谷さんの舞台以外を観たことが無いので色々言うことは出来ないのだが、小劇場の舞台を初めて観る人にとっては、このような演劇は今まで知らなかった世界を垣間見る言う状況になると思う。テレビや映画とは全く違う。私自身、来週結婚する同じく一年先輩でサークルの部長だった岩武さんから「行ってみろ」と言われて行ったときは、まるで異空間と言うのを感じたものである。狭い劇場に観客がひしめき合って、舞台では全く名前も顔も知らない「芸人」が、それぞれの役回りを演じているのである。小劇場はマイクも使わないし、芸人も無茶苦茶近くにいる。幕は無いが、照明を消すことで幕の代わりになるのである。因みに私が新谷さんの舞台を見ていて好きなものの一つは、一番最初に全く何も見えないくらいに照明が落ちて、次に照明が点いた時には舞台で役者が既に配置についていると言うもの。一気に芝居に引き込まれる。 さて、今日の話は、いつも通り、良く分からない状況設定である。 あらすじ: 妻と死に別れ間際の男・テツオ。彼は最愛の妻の死の床の傍にいる70代の老人であるが、細胞の成長が人より2倍遅いという関係上、70でも30代の体を持っている。結局妻が亡くなって途方に暮れるが、実は妻に惚れる前に、初恋で無茶苦茶惚れた女がいたらしい。その女は死んだ妻と知り合う切っ掛けをもたらした人物で、落ち込む親父を見かねた息子は、その女性を探しに行ってみようと旅を持ちかける。こうして、息子と一緒にテツオは思いでの地、函館へ向かうのだった。 って、全然イントロだけなんですけど、新谷さんはここまでの話では出てこず、青函トンネルを通過中の快速「海峡」の座敷列車に乗り合わせた、水産加工工場の跡取り息子(だったかな)の役回りで出てくる。主役ではないが、いつもの通り、オイシイ役だったと思う。あの役は新谷さんにしか出来ない役回りである。 新谷さんは東北人と言う役回り上、セリフはすべてが東北弁である。新谷さんは兵庫県出身の関西人で、高校からこっちであったものの、東北に住んだ経験は無い、筈である。多分そうだよな。しかし、セリフの東北弁は彼女曰く「完璧」だったようだ。と言うのも、彼女の両親は秋田出身で、今でもお母さんは田舎から親戚が来ると、モロ秋田弁になるらしい。それを聞いて育った私の彼女は、東北弁を解する日本人としてかなり上位に位置していると言えるだろう。 さて、舞台そのものの楽しみに話を戻すとすると、舞台と言うのはテレビや映画と異なり、舞台そのものが立体的かつ広がりを持っているという特徴がある。クローズアップなどのカメラワークは勿論無いが、舞台の隅から隅まで使って、役者が色々な動きを見せている。 例えば、テツオと息子のトオルがやり取りをしている脇で、スポーツ新聞を読んでいる自殺志願者サオトメが、二人のやり取りを聞いている。テレビなら、サオトメまで映していては人物が小さくなってしまい、あまり良く分からないカメラワークになるところだ。ワイド画面の映画スクリーンでも同様である。しかし、舞台は私の視線を左右させながら、テツオとトオルの他愛も無い会話を笑いながら見せつつ、その会話を盗み聞きするサオトメの面白いリアクションも見せることも出来る。つまり、舞台はどの部分も全く無駄に使われておらず、セットが全然変わらないのに、役者の演技によって舞台自体の表情が色々変わるのが面白い。 支離滅裂に見えるストーリーも、最終的には完結するのも、これまた面白い。舞台は多くの視点があるが、それが最終的に集約するのは、映画で言うとガイリッチーと言う風情も感じられる。 上演時間はいつもより若干長めの1時間半強だったような気がするが、非常に久し振りに観た芝居は面白かった。初めて芝居を観た彼女は劇場を出た後何度も「初めてこういうの観たけど、面白かったな」を暫く言い続けていた。 車を止めてある環七沿いのコイン駐車場から車に乗り込み、次は一路黄金町を目指す。環七⇒目黒通り⇒第三京浜と入れば、あとは馴染みのある横浜市内へ急ぐのみ。道は混んでいないと思いきや、やはり三ツ沢出口を出ると、いつもの通り浅間下交差点で渋滞。もうすでに3本立てのシリーズ第一作「我が人生最悪の時」は始まっているが、これは最初から諦めていた。 桜木町駅前で右折して日の出町駅で京急のガードをくぐり、京急に並走。魅惑の大風俗街・黄金町に到着。黄金町に来るのは昨年暮れ以来。黄金町の風俗街じゃない側は実は野毛山にへばりついた閑静な住宅街で、そこに会社が一棟アパートを借りて、パキスタンから派遣された出張者を住まわせているのである。ワンルームマンションだがロフトもあり、非常に清潔で、俺をロフトに住まわせてくれとお願いしたいほどの部屋だった。そこに何人かの日本人スタッフが呼ばれ、パキ料理を振舞われたのだ。美味かった。 で、今回は大岡川を渡ってすぐ左に入るブロックを目指す。目指す横浜日劇は、このブロックの中心にある。 私は横浜日劇の近くの駐車場に車を止め、いざ憧れの横浜日劇を目指した。 -
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