おかんがとつぜん、紅茶を出してくれた。
当然優しいからじゃない。
以前もらった紅茶葉があまっちゃってあまっちゃって、
困っちゃっているから出してくれちゃったのである。
そいつをごくごく飲んでいると、今度はおかしを渡された。
四角いクッキーの袋に、白く輝くその名前。
「白い恋人」
……これは。
伝説の北海道みやげ、「白い恋人」!
さっかはしばらく、お手軽にパニックを味わった。
だって「白い恋人」といえばもう、
ハワイといえばマカダミアナッツ、
のび太といえばスネ夫のミド〜ル友達、ってくらいに伝説!
てか、おかん!
なんでこんな商品を、近所で手軽に仕入れてきましたか?!
私は一応「白い恋人」をもぐもぐ食べつつ、話を聞いた。
「バイト先のデパートの物産展で北海道物産があったとき、
あまったから安く買わされたんや。
まー、こっちも喜んで買うてやったんやけどね」
もぐもぐ。ごくごく。
「それがな、大切にしすぎてもてな、
今までとってあったんよー」
もぐもぐ。ごくごく。
「それでな、あっはっは。
賞味期限、四月の末できれてんねん」
ごくん。
……。
おかあさま?!
「だ〜いじょうぶや、ってっ!」
おかんは今だかつてないほどのやさし〜い笑顔でそう言って、
部屋を出ていった。