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■ 11日閉館
明日、閉館だそうですね。 渋谷の隠れた名所、五島プラネタリウム。 一年前でしょうか。 財政難で閉館する予定だと聞いて、それから一度は行こうと思いながら、 一度も行くことなく、とうとう明日が来ます。
あのレトロさが好きでした。 ほとんどのプラネタリウムが、録音したテープを流し、 空の浮かぶ星座もテンプレートみたいにすでに形になっているような そんな時代に。 あそこは、狭い空間のなか、おじさんやおばさんが、のんびりとしゃべりながら、 光のペンで、空を指差すんです。 のんびり、寝転がりながら、あまり立派じゃない空を見るんです。 ほんの少し、現実を忘れて、旅立てる時間が訪れる。
今はもう、渋谷のど真ん中、あんな空は見えない。 でも、あそこで私が見たのは。 ホンモノじゃないかもしれないけれど、 確かにそれは、ひとつの、空、だった。
建物を現実と同じく増やすとね、星空が見えなくなるから、 だからあえて今も、昭和初期の渋谷の街なんです、と話してくれた、 あのときの男性のナレーター。 すぐ後ろで、ぼそぼそとマイクでしゃべっていましたね。 あの、アナログさが、 そのまま、昔のあたたかさ、のような気がしました。
あの場所が、なくなるんですね。 全国にたくさん、プラネタリウムなんてあるのに。 代えられるものではない、そんな気がして。 なにか、淋しいのです。
財政難、だというのが、なおさらに哀しい。 そういうせちがらさを忘れさせてくれる場所であっただけに、 資本主義のなかで、淘汰されることが、ほんのり苦い。
でも、いちばん苦いのは、いつでも、いつまでも、在ると思っていた自分。 そうして足を運ばなくなった人が、けっきょくは財政難を招いたわけで。
いつまでも変わらずにそこに在るとは限らない、たくさんのもの。 喪う前に、しっかり握り締めておかなくては。
2001年03月10日(土)
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