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17歳 - 2001年03月14日(水) 朝、最寄り駅で電車を待っていたら高校生の子が急に目の前に来て「せんせい?」と私に向かって呼びかけた。 よくみると、その子は私が大学生の時に塾で教えていた生徒。 少し、幼さの残る目元はあまり変わってはいないけれど、詰め襟の制服を着て、短い髪を今風に散らしている様子は、もうすっかり「高校生」でした。 私のなかではまだ、中学生の頃のあの小生意気な「男の子」姿しかないのに、もう、すっかり落ち着いた「大人」になってました。 「もう4月から3年生やで」 という彼。 「勉強してる?」 というありきたりな私の質問に 「してるで。この間の試験、クラスで7番やったで。だいたい、それくらいやで。今」 と、ちょっと得意げに答えます。 「すごいやん」と私が言うと、嬉しそうに笑います。 彼は、私が持ったクラスでも一番の問題児でした。 私が受け持ったクラスは比較的、男子は大人しく、女子にははきはきとした子が多かったものの、全体的には「いい子」が多いクラスでした。 私が受け持った当初、その中で彼は一番勉強が遅れている子でした。 かといって、決して頭が悪いわけではなく、単にやらないだけだということはすぐに分かりました。 本人にやる気が出れば、こういう子は伸びるのだということは、私が中学生の頃から思っていたことでした(実際そういう子が周りにはたくさんいて、事実そういう子達がやる気を出すと、たちまちいつも勉強をしていること同じくらいの成績になっていたからです)。 しかし、その肝心の「やる気」を彼はなかなかもてません。 やる気がないから、授業中にしゃべる、他の子の邪魔をする・・・。 けれど、遅刻をしてくることはほとんどなかったのです。だから、決して「塾」や「勉強」が嫌いなわけではないのだと思っていました(嫌いなら遅れてくるし、こないだろうから)。 その彼に対して、私は私が教えた3年間の間にどれだけ怒ったでしょうか。 あまりにも私語がひどいときには「帰れ」と怒鳴ったし、消しゴムをちぎっては投げて遊ぶときには「塾に来る前に家でしつけられてから来い」と怒鳴ったこともあります。 授業中、彼はいないものとして、ずっと彼の存在を無視していたこともありました。 それでも彼は塾を辞めませんでした。 そして、少しずつ、私語が授業に対する質問になり、高校受験の時期にはトップクラスの成績になっていたのでした。 今、彼は勉強だけではなく、高校で陸上部に入っているそうです。 「がんばってんなあ」 というと「がんばってんで」 と返って来ました。 今でも私を「先生」と呼ぶ私の最初で最後の生徒たちは、今「17歳」です。 私が教えていた塾は中学生までだったので、彼らが卒業して以来、会っていない子達がほとんどだけれど、きっと彼らは大丈夫。 悩むことも、しんどさから回り道をすることもあるだろうけれど、それでもきっと、彼らは大丈夫。 何故かそんな気がするのです。 -
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