あ い の う た 。



2004年11月28日(日)  野菊の墓

あたしは本を買って、

箪笥の肥やしならぬ「本棚の肥やし」にしてしまう事が稀にあります。

今日も模擬試験で問題文になっていた小説は、

偶然にも本棚の肥やしになってしまった本からのものでした。




伊藤左千夫の「野菊の墓」を買ったのは中学3年の時だったような、高校生になってからだったような、

それすら覚えていない。

百ページにも満たない物語なのに、

数ページ読んで止めてしまった。




問題文に抜粋されていたのは、

淡い恋心のはじまりを描いた部分。

でもあたしは結末を知っていた。




『民子』は死んでしまう。




あたしははじまりと結末しか知らない。

けれど確かに『民子』は死んでしまう。




家に帰って、本棚をひっくり返して「野菊の墓」を探した。

やっと見つけたその薄い文庫本。

リボンが挟んであったのは、『野菊の墓』の最後のページ。




民子は余儀なき結婚をして遂にこの世を去り、
僕は余儀なき結婚をして長らえている。
民子は僕の写真と僕の手紙とを胸を離さずに持って居よう。










この下りだけは覚えていた。




お父さん。

お父さんも、こんな気持ちですか。

幽明遙けく隔つとも 僕の心は一日も...




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