+女 MEIKI 息+
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2001年06月20日(水) |
ここは新宿、歌舞伎町 |
歌舞伎町の裏に、愛想笑いなど一度も見せたことの無い恐ろしく無愛想なおばさんが一人で切り盛りしている喫茶店が在る。そこは、せいぜい10人も客が入っただけで、二酸化炭素だらけになるだろう。第一、椅子が15脚あるか無いかである。しかし土地柄、色々な客が頻繁に出入りする。
今時、あまりにもソレと判るのも珍しい、パンチパーマ大仏オヤジとか 立ちんぼの、現場本締め(大物風ではないが、其れなり。しかし、使いっぱの風情が抜けない風体)とか 韓国系の店(飲食業だったりマッサージだったり)が多いせいか、他国語を話す色白の姉さん達とか 得意先周りを、今日は延期にした疲れた営業サラリーマンとか 古くから住んでいる地元のお爺さんとか
小さい店構えのせいで、店と判断されにくいのかごく普通の客層があまり居ないのが特徴である。例え来たとしても、あの無愛想な対応だと、二度目は無いのが普通なのだろうか。あ、いや、あたしは地元ではないくせに、かれこれ10年以上も利用しているので、ごく普通の客も利用すると言うことにしておこう。そしてオババは、ホント常連さんとしか滅多に口は利かない。
昨日、その店に行くと珍しく客が多数居たので初めてカウンターに座った。 近くで見るオババは、迫力があった。
「アイス珈琲お願いします」と、つい謙って小さな声で言わなくてはと思わせる。 ところがそれに対しオババは、無愛想なのだが返事はハッキリとデカイ声なので、慣れてないと余計にビビルかもしれない。 まさに、小さい頃に行った駄菓子屋のババアの雰囲気である。
カウンターに座ると、オババ越しに外の景色が見える。何十回も入った店なのに初めて気がついた。いつもは恐ろしさ故、あまりオババの居るカウンターの方は見なかったからだろう。 そこから外を見ると、店内以上に新宿を凝縮したような人達が沢山通ることにも気がついた。
「あそこの青年、見える?」 初めて、オババがオーダー以外の話題を振って来た。やっと、10年以上経って常連さんの仲間入りをしたのだろうか。
突然だったので、思わず座りなおして「はい。」と答えてしまった。
指す先には、ショルダーバッグを掛けた若者が箒と塵取りを持って公園の一郭を掃除していた。オババの話しだと、数ヶ月前から定刻になるとどこからか現れて、持参した箒と塵取りで集め、そしてバッグから大きなビニール袋を出しそこにちゃんと入れてから、公園のゴミ入れに片付けて帰って行くのだそうだ。公園の大きな木の周り、そこだけを。 みたところ、ホームレスとはかけ離れた小綺麗で洒落た格好をしているのだが、何か他の思考が働く種類の人なのだろうか。
普通に歩いていると気付かない人達を、観察するのはとても面白い。
「あそこに居る女は、その先の男を誘うよ。でも、相手にされない。」と、またオババは言う。 「あっちの方で見てる男は、その様子を伺って自分から寄っていくから、ホラね。」
ディズニーあたり、毒リンゴ作りの魔法使いおばあさんを思い出してしまった。まるでオババが人を操っているよう、言う通りになるのを窓越しに見た。 毎日、そうして窓の外を見ていると先が読めるのだろうか。
オババの毒気にあてられたのか、人間観察がまたまた面白くなってしまった。
花園神社の敷地内(?)にある呑み屋も、入るのにちょっと勇気が必要かもしれないが馴染むととても居心地が良い。 あたしは酒が全くダメだけど、それでも充分に満足する店である。もちろん、ここは恐いオババは居ないのでお勧め。
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