+女 MEIKI 息+
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2001年11月29日(木) |
誘拐犯はパンダ(続) |
カバンの肩紐を掴まれたまま、オドオドするわたしを気にせずにニコヤカな声でパンダが「こっち」と誘う。
「車あるし大丈夫だよ。」
「なーにが、大丈夫なもんか。」
「丁度、ボクも行くところだったから。」
「あー、そうでしょうよ。自ら出頭した方が罪は軽いからね。」
「何言ってるんだよー。これだよ、この車。」
味も素っ気も無い、普通の乗用車がすぐ傍に止めてあった。これに乗れってか?乗ったら最後、恐さの極みではないの!
後ろからパンダの手がドアを開けてくれた。親切なパンダ、や、そうじゃないだろう。 「ほら、早く乗って」
凄く悩んだけど、この先の展開への興味の方が勝ってしまった。わたしは乗ってしまった。シートに座ると膝が色々な機械に当たる程にゴチャゴチャしている。あー、弄りたい。 車の後ろを回って、パンダが運転席に座ろうとドアを開けた。目は機械よりもパンダに釘付け。 お尻から乗り込むのと同時に、パンダの頭を取る(やっと、これで犯人の顔が見れる。なーんだ若造じゃないのと、これが第一印象。)
「なーに?最初っから随分と機嫌悪そうだけど、どうしたの?」 汗に濡れた髪を上げながら、元パンダが訊いてきた。
「あんた、誰よ?」 他の言葉が、頭の中をグルグルしていながらもそのひとことを言うのがやっと。
「誰って。やだなー、パンダでーす!(にこやかに)」 明る過ぎて、恐いぞそれは。
車を発進させようとする元パンダの腕を取って、も一度訊く 「あんた、だれ?」
「えー。マジで訊いてるの?ササキですったら。ほら、米屋の息子の。」明るく返答する姿勢にあっけにとられた隙に、車は発進。「ちゃんとシートベルトしてくださいね。」と言われたのは覚えているが。
ほんの5分もしないうちに、警察署に到着した。 警察署の玄関前に車を横付けしてもらって、明るい挨拶をされわたしは何事も無く車を降りた。
小さな警察署なので、入口を入ってすぐの受け付けで所定の用紙を貰い記入し提出して名前を呼ばれるまで傍の椅子に座っていた。そこへ、駐車場に車をとめてきたのであろう元パンダが、パンダの頭を脇にかかえたまま自動ドアを開けて入ってきた。
「お疲れ様です」受付の人にそう挨拶して、椅子に座るわたしに会釈した後に向かいの廊下を通って奥に消えていってしまった。
「い、今の人。誰なんです?」そう訊くのを我慢することが出来ずに受け付けの人に思わず尋ねた。すると受け付けの人は「標語を持って、交通安全を促しているんですよ」と、答えてくれた。その様子からして、ごく当たり前のことらしい。しかもバイトは雇わないだろうから、普通に考えても警察官なんだろう。たぶん。
そっか!交差点を挟んでパンダを発見した時に、パンダが掲げていたA3の厚紙には交通標語が書かれていたんだ。 でも、米屋の息子のササキ・・・って誰?
未だに誰だかが不明のままである。
皆さんも、妙な事件に巻き込まれないように、パンダだからって安心してはいけません。無事、戻ってまいりました。今回は。
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