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2002年02月07日(木) 氷の世界


 ゆびきりげんまん嘘ついたら・・・
 ゆびきった。

 絡めた指に当たるあなたの薬指の指輪を、あなたの嫌いなボルドー色に染めた長い爪で弾きながら陽の光より眩しいネオンの街中から外れた通りを歩いた。
 フィルターを通したような滲んだ景色は、煌びやかでも正体の掴めない今の二人の関係に良く似ていると思った。だから、そこを避けるようにして歩いたのかもしれない。

 今夜こそ憎まれ口を並べほとほと呆れられたいと、あなたの嫌いな装いで随分と遅れて待ち合わせの場所に着いた。ガラステーブルの上の灰皿には数本の吸殻があった。それでもたった今着いたような笑顔を見せ手を挙げて招く態度を見て、それを優しさと素直に受けずに悲しくなる自分が居た。

 夕食にとったアルコールを冷ますのに、公園通りを手を繋いで歩いた。
 冷えた指を大きな手が温もりを与えようとしているのに、わたしの指先に当たったあなたの指輪は、身体の芯まで冷やしていった。


 偶然とは厭らしいもので、もう何年も経ってすっかり忘れていたのに、同じ場所で同じように会ってしまった。
 まだ好きでいてくれるとはほんの少しも思ってはいないけど、出来たら外した指輪の跡は見せないで欲しかった。
 すっかりどうでも良い女のになったんだなあと、そう思ったら優しい笑顔が返せるようになっていた。




 誰か指切りしようよ 僕と指切りしようよ
 軽い嘘でもいいから今日は一日はりつめた気持でいたい
 小指が僕にからんで動きがとれなくなれば
 みんな笑ってくれるし 僕もそんなに悪い気はしないはずだよ
 流れてゆくのは時間だけなのか 涙だけなのか
 毎日 吹雪 吹雪 氷の世界

 作詞:井上陽水


香月七虹 |HomePage