ここは、自分を取り巻く全てが、僕に優しくて心地よくて。 きっと、僕は甘えてしまうだろう。そうして甘え続いてしまう自分が、だんだん嫌になって、君まで嫌いになるかもしれない。そんな自分を、僕はまた嫌いになっていく。 それじゃあ駄目なんだ。 僕は僕の為に、この街を出ていく。 理由はそう、簡単でいいんだ。「だから、ごめん。――元気で。いつかまた、ここに帰ってくる。ここは僕の、大切な場所だから。――君が居る、大切な場所だから」 そう言って、彼はそっと彼女を抱きしめた。