冬が終わり。春が来た。 雪がいつからか雨に変わる。 冷たい雨だ。 色まで沈んだように暗い。
いつだったか彼女が言っていた。 雨が好きだと。 僕には理解できなかった。 雨は気分を落ち込ませるからだ。
彼女は雨が降る様を 窓からじっと眺めていた。 僕はそういった彼女を見ている方が ずっと好きだったけど。
あれからというもの 雨が降るたびに彼女を思い出す。 なぜなら 僕に残された彼女の欠片は そう多くはなかったから。
そしてなにより 雨には彼女の意志と美しさがある。
濡れたい雨も。あるよね。
窓の外を見ながら確かにそう言った。 その時はどういうことか分からなかったけど 今なら分かるような気がする。
叩き付けるような強い雨に変わり 窓の外はなにも見えなくなった。 雨音が まるで孤独を運んでくるように 僕を窓際から遠ざけた。
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