short story


2001年03月06日(火)


44-孤独の雨-
冬が終わり。春が来た。
雪がいつからか雨に変わる。
冷たい雨だ。
色まで沈んだように暗い。

いつだったか彼女が言っていた。
雨が好きだと。
僕には理解できなかった。
雨は気分を落ち込ませるからだ。

彼女は雨が降る様を
窓からじっと眺めていた。
僕はそういった彼女を見ている方が
ずっと好きだったけど。

あれからというもの
雨が降るたびに彼女を思い出す。
なぜなら
僕に残された彼女の欠片は
そう多くはなかったから。

そしてなにより
雨には彼女の意志と美しさがある。

濡れたい雨も。あるよね。

窓の外を見ながら確かにそう言った。
その時はどういうことか分からなかったけど
今なら分かるような気がする。

叩き付けるような強い雨に変わり
窓の外はなにも見えなくなった。
雨音が
まるで孤独を運んでくるように
僕を窓際から遠ざけた。

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日記才人