short story


2002年12月02日(月)


「月の暗示」


段階を経て下り行く太陽。
目の前で輝く月の暗示は
白ではなく沈黙となる。

人の集まる温かいところ
その割れ落ちた綿毛から
砂へと伝わる微かな音を
指先で捕らえては
また一つ巡って
輪は閉じる。

目に見えることを信じないで
目に見えないことを望まない。

私と貴方は
隔絶された壁の向こうで
声のみを響かせて
互いを確認した。

いつの日か
今、自分のいる場所も
すべて空気に溶けて
心さえ消えたら
誰かとに語るのもいい。

そうして混在するだろう
二人の距離に
私はいま少しだけ想いを巡らす。

それは月の暗示。

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日記才人