2003年03月26日(水) |
「美味しいお蕎麦屋さん 見つけたから 今度行こう」(「ex.人間」) |
■心のこもったメールを頂き、 久しぶりに泣けた。 気持ちいい。
泣くことは、セックスだ。 (と、早川義夫「たましいの場所」(晶文社)風に言ってみる。 けどセックスについては良く知らない)
馬鹿だけれど、ワードに張り付けて文字数を数えたら 2655字もあった。 長い手紙だった。
恋愛のことを「色恋沙汰」と書いてあった。 とても大人だと思った。 こんな大人になりたい気がした。
>ひとつの家を円満に運営していくことがどれほど難しいか。 >わたしが雑誌をつくったら、「早く帰れ」というキャンペーンをしたいです。 >消費に焦ってるから不況になるんじゃないでしょうか。 >みんな必要なものは買いますよ。 >他人に口だして他人から奪おうと思うから戦争になるんだし。
誰かが、こんなものを作りたいんだよと 話すのを聞くのはとても好きだ。
そして、自分はきっと そういう素晴らしい人たちの言葉をひたすら素直にうんうんと聞いている役回りが とても向いている気がする。
本当は。
だけど私がやりたいのはそんなことじゃないんだから 進んでいくしかないしなるようにしかならないって あの人も言ってる。
■ということで気合いの入れ直し。 以前、現役編集者の方に メールで志望動機を見て頂いたものを添付する。 (返信メッセージ)
以下のいくつかのれいこさんの文章を読み、 「思い」があふれていて、課題の文字量に収めきれないもどかしさが、 痛いほど伝わってきます。 試験秀才は、たとえて言えば規定の文字量に収めるのがうまいわけで、 「思い」があるのかどうかは定かではない。 ぼくは「思い」がなければモノを作る資格がないと考えるタイプなので、 れいこさんの姿勢は、たいへん好ましく思えます。 それが、まず基本的な感想。
その上で、試験に受かるには、やはり出題者の意図をふまえて、 自分を理解させなければなりません。 その点で言えば、ちょっと工夫の余地がありますよね。 それは自覚されているとおりでしょう。
ざっと指摘していきます。 基本は自分の「思い」を抽象化し、客観視すること。 次に、そのことを具体的な事実や情報を使って、相手に説明することです。
>「見のがされている人やものにスポットをあてたいから」です。 > >(↓ここから書くことはあくまで私の心の動きであり、面接には適さないと思われますが「本当はこう思っているのだな」 >ということを分かって頂いた上でのうまいアピール方法をアドバイスして頂けたらと思います) > >私が何故このようなことを思ったかには、いくつかの理由があります。 > >■松尾スズキさんの本との出会い >とかく上に上がろう、のし上がろう、という上昇志向が当たり前のようにいわれる社会 >で、だめなことを「だめだあ〜」と情けなく書いて売れてしまっているのが彼でした。 >私はそんな彼の生き方を、素敵だなと思いました。通り魔に襲われた自分の体験までネ >タにし、笑いに返るエンターテイメント人生を私も見習いたいと考えています。
まず、「上昇志向が当たり前」というのは本当でしょうか。 むしろ、「上昇志向」が持てないからこそ、 松尾スズキが受けているのではないでしょうか。 時代の気分とマッチしているわけです。 これは「前提」の誤解。 松尾スズキのスタンスを見習いたいというのは素直な感想なのでしょうが、 素直すぎる。というか、すれっからしの編集者にとっては、当たり前。 なぜなら、時代の気分がそうなっているから。 なので、一考を要する。 なぜ、松尾スズキに引きつけられるのか。 もう一歩、踏み込んで考えてみてください。
>■(精神的に)マッチョでない男の子の魅力 >繊細すぎる神経が、私には新鮮でした。格闘技ブームからは程遠いナイーブ君は、 >不景気の日本に新しい価値観を提示してくれていると思います。
「新しい価値観」に惹かれる自分、というのは、 いい視点だと思います。
彼の言うこと(グローバル化がもたらす南北問題)は正論です。 経済誌にいるから、そのことは理屈としてよく分かる。 スターバックスが火をつけたカフェ・マーケットの盛り上がりは、 一面では「新しいアイデアによる産業活性化」の事例として語ることができる。 経済誌はみんなそのように書きます。 ただ、その華やかさの陰で、世界のコーヒー市況が暴落して、 アジアや南アメリカのコーヒー農園が壊滅的な打撃を受けているという現実がある。
でも、れいこさんはスタバやマックに行きませんか? 個人の行動として、ハンバーガーを食べない、という選択は構わない。 でも、だからどうした、という感じもありますよね。 自分がハンバーガーを食べないことが、南北問題の解決の一歩になる、 といわんばかりの安っぽいヒロイズムも感じてしまう (その男の子はまじめに考えているのでしょうけど)。 難しいところですね。
>■綺麗なものだけをカタログのように並べるだけのファッション誌に違和感を感じるから。
>以下作文 「10年後の自分」( に、一応通ったものです) 「女性の汚いところを服に出していきたいんです」雑誌「装苑」でTOGAのデザイ ナー古田泰子のインタビューを読んではっとした。私は古着屋の展員さんとの会話を思 い出していたーー。
幼い頃、私は服を選ぶことや縫うことが好きで、将来はデザインやパターンを学びた いと考えていた。しかし、10代の半ばになると、私の興味は服自体から”着飾るこ と”に移っていった。雑誌に載りたい、目立ちたい、その一心で派手な服や高価な服を 選び、いつしか私は自分の本当に好きなものが分からなくなっていた。
そんな折、大学のレポート取材で古着屋のスタッフの方にお話を伺う機会があった。 私が「古着を合わせてもどうもおしゃれに見えないのでブランド品ばかり選んでしまう のですが」と言うと、「それはあなたがまだ、服に追い付いていないからよ、との答え だった。「本当に格好いい人は服の権力にすがろうとせず、自分に服をあわせる。だか ら歴史のあるヴィンテージが似合うのよ」
私は自分がいかに恥ずかしい、分不相応なセンスをしていたかに気付いた。クールな 女性に見られたくてコム・デ・ギャルソンの黒を着ても、私の内面はそれと大きく異な る。私がファッションを楽しめなくなっていた理由は、表層のみを塗り固めようと必死 で、中身がすかすかだったからだ。 TOGAのブランドコンセプトは、今の私の等身大だった。「情念・嫉妬・生理」どろど ろした部分を隠さずに出している。ようやく着こなせる服を見つけたと思った。 10年後、あらゆるブランドーー夫の地位や会社の権威に寄り掛からずとも品格を失 わない女性になっていたい。それが、歴史ある服を着こなせる時だと思う。醜い自分を 覆い隠すファッションの限界を知ったから目標が見えた。
違和感は良いですね。 ぼくも感じます。 このように挑戦的な命題を歓迎する編集者と、 煙たがる編集者とがいる。 いずれにしても既存の雑誌に対する批判的な意見なのだから、 その違和感は、きっちり説明できるように、分析しておく必要があります。
>「本当に格好いい人は服の権力にすがろうとせず、自分に服をあわせる。だか >ら歴史のあるヴィンテージが似合うのよ」
よい言葉を拾ってますね。 いい感覚です。
> 私は自分がいかに恥ずかしい、分不相応なセンスをしていたかに気付いた。
すぐ反省してまうのは、素直で良いけれど、 あえて店員さんに反論する理屈も考えてみたら?(思考の訓練として)
>クールな >女性に見られたくてコム・デ・ギャルソンの黒を着ても、私の内面はそれと大きく異な >る。
じゃあ、れいこさんがその時に思い至った「内面」というのは、 どういうものなのか。
>私がファッションを楽しめなくなっていた理由は、表層のみを塗り固めようと必死 >で、中身がすかすかだったからだ。
ここも「中身」って何なのか、 自分で理解していますか?
>「情念・嫉妬・生理」どろど >ろした部分を隠さずに出している。ようやく着こなせる服を見つけたと思った。 > > 10年後、あらゆるブランドーー >夫の地位や会社の権威に寄り掛からずとも品格を失わない女性になっていたい。 >それが、歴史ある服を着こなせる時だと思う。
これは、抽象化ができている。 でも、ありきたりな結論であるとも言える。
>醜い自分を覆い隠すファッションの限界を知ったから目標が見えた。
「醜い」というのは、 どのようなことを指すのか。 「内面」の説明がないからわからない。
>■裏側(今は見のがされているもの)を見せることでものごとはいっきにおもしろくなる
感じは分かる。
>以下 編集部に送った志望動機(400字) >(新卒の採用ではなく、試しに送ってみただけです) > > 1月30日のNHK「にんげんドキュメント」は、 >岡八郎の吉本新喜劇復活の舞台裏を >やっていた。妻の自殺、アルコール依存症、癌。脳挫傷のために64歳の彼は台詞を覚 >えられない。半分くらいに痩せて、娘に怒られ、後輩に指導を受けてまで何故舞台に立 >つのか。これじゃあ少しもお笑いじゃないよ、涙が流れて、いたたまれなくなって、そ >れでも目が話せなかった。 > > 舞台の上には、何があるのだろう。本番で、見事に台本以上のことを演じ切った彼を >見て、不思議な気持ちになった。たった一日の、舞台の上の一瞬の為に人は生きること >ができるのだ。彼の「一瞬」ははっきりと、日常の世界=こちら側に存在していた。お >酒の中でも、死の中にでもなく。そのことに一筋の光を、見たように思う。 > 華やかな世界、綺麗な世界の背後に潜む決して綺麗なだけではない人間模様を、御誌 >を通じて伝えてゆきたい。表層だけをを飾ったカタログでは雑誌では、人は変わらない。
それなりにわかるけれど、 やっぱり挑戦的ですね。 「カタログ」と「非カタログ」と、 れいこさんのアタマのなかで、どのように違っているのか、 もうすこし具体的に知りたいところです。
>軸となる動機は上のような心の動きから発生しています。 >長くなりましたがアドバイスを頂きたいと思います。
心の動きは、よくわかりました。 「松尾スズキ」 「ナイーブ君」 「古着屋さんの店員の言葉」 「岡八郎」 とても、人にれいこさんの思考を理解させやすい素材ばかりですね。
で、その上でアドバイスを、ということですが、 これは簡単ではない。 ちょっと角度の違う素材をもってきて「補助線」を引いてみたいところですね。
自分発見のための思考実験ですが、 れいこさんが「好きなモノ」と「きらいなモノ」を100づつ書き出してみる、 というのはどうでしょうか。 ものでも人物でも雑誌でも本でも芝居でもブランドでも構いません。
>たくさん書いてしまいました。 >志望動機が さんに「伝わっているのか」 >「私の言っていることがひとりよがりになっていないか」 >が今の私の一番の課題です。
よりよく伝えて、 ひとりよがりにならないために、 工夫の余地はあります。 冒頭で書いたように、 「思い」がある以上は、それをよりよく伝えることを考えればいいのです。 「思い」がないやつより、よっぽどいい。 焦らず、やりましょう。
■御指摘通り、好きなもの100個を書き出してみる。 1松尾スズキ 2林真理子 3村上春樹 4ママレイド・ラグ 5齋藤美奈子 6syrup16g 7手紙を書くこと 8日記を書くこと 9人から何かを勧めてもらうこと 10全く新しい興味分野の話を聞くこと 11「君はこういう人だね」と意外な意見を言われること 12初対面の人と会うこと、話すこと 13作文を添削してもらうこと 14いつも謙虚で腰が低い人 15これが好きだ!とおたくなものがある人 16ジーンズメイト着ても、少しも恥ずかしいと思わないくらい飾らない人 17中野ブロードウェイ 18深夜のデニーズ 19大学構内 20神保町 21初めて行く駅 22高崎線から見える利根川、東京郊外の風景 23装苑 24SPA! 25サイゾー 26シンプルという贈り物(アーミッシュの写真集) 27僕の地球を守って 28鉄コン筋クリート「ソコカラナニガミエル?ココカラハナニモミエナイ」 29考える人 30講演会 31添い寝 32ニンゲン御破算 33中学のころの、成績表 34リィリィシュシュのすべての、伊藤歩の役 35バスケットボールでフェイントが決まった時 36
途中で寝た。
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