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2005年05月07日(土) 王子様への手紙

前略

ご無沙汰しています。
最近ずいぶん暖かくなりましたね。
寒いのが本当に苦手なので、助かります。
スギ花粉も一段落して、穏やかな日常が戻ってきました。

お元気ですか。

あなたは寒いのより暑いのが苦手だから、
きっとイライラしているんでしょう。
半袖Tシャツ姿から伸びた白い腕が浮かびます。

こちらはゴールデンウイークでした。
暦通りお休みがとれたので、いろいろなところに出かけたよ。
この歳になって、少し、自分なりの旅行や散歩のコツがつかめてきたように思います。
つまり、現地に行ってこそ分かる細部に、
だんだん目を向けられるようになってきた。
実際に足を運ぶと、ガイドブックには書いていないことがたくさんある。

大学生の頃は、この世界の有限や
自分が結局どこにもたどり着けないことについて嘆いたけれど、
最近は、まだ見ぬ街を想像してわくわくします。
だから、東京23区の地図を買いました。
地図が読めないから
「今日は西に行った」とかその程度のところから
始めてみようと思います。

昨晩は、神保町から根津まで歩きました。
昨晩というのは、けっこう遅くて、夜の8時頃のこと。
友人とキッチン「南海」でカレーを食べた帰り、
本郷の東京大学構内を通って帰ることにしたのです。

東大は早稲田と違って門が立派で、(早稲田大学には門がないのです)
一度入るとなかなか出られなかったり、
逆に一度門を通り過ぎると、なかなか構内に入れなかったりしました。
講堂にはまだ研究生がいるのか、明かりのついた窓がたくさんありました。
それがぼおっとにじんで、闇を照らし、
黒ずんだ、クリーム色の壁を浮かび上がらせます。

一番奥にある「動物医療センター」と書いてある棟の前を通ったら、
建物の中から「オーンオーン」という犬の遠吠えがして
その時だけちょっと、怖い感じがしました。

春の宵は、空が紺色です。
月はなく、星は、少し見えます。
日陰の土は、前日に降った雨を含んで塩素のような匂いを放っています。
たまに、すれ違う人がいます。

東大を過ぎて裏の路地に入り、
旅館やらすでに閉まったカフェやらを冷やかしながら
やがて言問通りに当たって右折し、不忍通りまで。

ヒールのあるブーツで1時間以上歩いたから疲れて、
途中のコンビニでアイスを買って食べました。
170円のソフトクリーム型を選んだら、
「君のそれは高級なやつだ」と友人が言います。
自分がガリガリ君だから、悔しいのでしょう。

いい大人が、夜中にアイスを食べている光景が、
なんだか妙に幸せに思えてうれしくて、ロマンチストな私は
また紺色の空を見上げました。

散歩をするといろいろなものを見ます。
今日は書いていない内緒のものがたくさんあります。
便せんがいくらあっても足りません。

だからまた書くね。

私は明日から会社。
あなたのような気楽な人生に早くなりたいな。

今は、どこにいるのでしょうか?

もうすぐ誕生日だね。
もうおじさんなんだから健康に気を付けて。
たまには私の前にも顔を出してください。

かしこ


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