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2005年10月10日(月) 川上弘美『センセイの鞄』

川上弘美『センセイの鞄』。久しぶりに恋愛小説を面白いと思った気がする。

江國香織や吉本ばななの書く恋愛小説の主人公に、私は死んでも感情移入できない。彼女たちはたいていお風呂にバラを浮かべたりするし(私はお風呂が嫌いだ)男性のいない時に、なにやら虚無った気持ちでおしゃれな雰囲気のバーに行ったりするし(私は花まるうどんが落ち着く)だいたい、顔がかわいいんだかスタイルが良いんだか知らないが、冗談の一つも言わないくせに、男の子にもてている。

『センセイの鞄』の月子は、とても面白い。顔もけっこうかわいいんだろう。でも40近いし、もろもろの問題でもてない。多分。

月子が、寂しくて歩きながら泣くシーンがある。一人で、泣くシーンだ。この恋愛小説の中で、私が一番良いと思ったのはここだった。一人で、泣く。

ananがよく書いている「彼がいない時でも、一人で行動できる女になりましょう」というのに、私は長年腹を立ててきた。そんな無理矢理一人にならなくても、こちとらひとりじゃ!と。だから川上弘美のように、きちんと一人を書ける作家が好きだ。「一人だ、さみしい、虚無だ」という、書いたところで何も心を動かされないことばを使わず、心地よいくらいの軽妙さで、ぷぷっと読者を笑わせながら、川上弘美はどこまでも一人の女の子を書いてくれる。


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