2006年06月15日(木) |
全力で仕事をするということ |
直属の上司である、2つ年上の先輩が退職するそうだ。この1年間、ひとつの妥協もなく仕事をするとはどういうことなのかを、教えてもらった人だった。今まで仲のいい先輩が辞める時は「転職おめでとうございます」と言ってきたが、彼の場合は「ああ、置いていかれてしまう」という失望感、脱力感が先に立つ。
何度も怒られた。原稿の細かい論旨の崩れをしてきされて、ちまちまと何度も出し戻しをした。図版が書けなくて途中で呆れられて、それでも自分がいいと思うまでは絶対にOKを出してくれない。何度も何度も落ち込んで、恨んで、悔しくて、それでもなぜか、「もっと教えて欲しい」と思わせる心根の優しい人だ。
彼が、私の原稿に対して「情報満載で面白かったです」と書いてくれたメモを、今も机に貼って仕事をしている。こんなことはめったにないから、大切に、その言葉を目標に続けてきた。
「自分の仕事に妥協をしない」というのは、本当に辛いことである。ある程度慣れてしまえば、妥協をしても本は出来上がる。妥協をしたことは、本人しか知らない。そのことに痛みさえ感じない社会人になることもできるかもしれない。
私は楽をしたがる。私はずるい。私は徹夜をしたくない。
私のそういう腐った根性が、彼には一つも通用しなかった。全てに全力投球することの辛さと、それからその面白さについて、最近ほんの少しだけ分かってきた。体育会系の性格に付いていけないと思うことはよくあるが、本当に大切な時に踏ん張ることがどれだけ大切かは、彼の仕事ぶりを見て学んだ。
仕事をするとは何だろう。すり切れるほど繰り返してきた問を、今もう一度、考える時が来たのだと思う。
|