橋本裕の日記
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2001年03月02日(金) |
遅ればせながら、天国の父へ |
昨日は私の勤務先の高校の卒業式の日だった。3年生の担任でなくても、こうした大事な式の行われる日は緊張して疲れる。とくに今年は成人式での若者の傍若無人ぶりが報道されたりしたのでよけいだった。生徒の日頃の行動を見ていると、何が起こっても不思議でなかったが、北さんをはじめ、担任の先生方の事前指導もあって、式はどうにか無事終えることができた。
長女と次女の通う高校でも無事卒業式ができたようである。長女は3年生だったので、卒業生ということになる。妻も私も卒業式には行かなかった。二人とも仕事があったし、「もう子供じゃないんだから」と言う感じである。しかし、高校の卒業式に出席する父兄は多いようだ。うちの学校でもそうだし、長女の友人の父兄もほとんど来たという。長女は妻に「べつに、こなくていい」と言っていたが、内心はどうだったのだろう。
昨夜はいつになく早く、9時過ぎに床についた。部屋の灯りを消して寝ていると、ドアにノックの音がして、長女が入ってきた。何事かと思うと、 「おとうさん、おかげで今日卒業することができました。これまで、いろいろと私をささえてくれて、ありがとう」という。いつにない改まった口調だった。
私は布団から起きあがって、「よくがんばったね。おめでとう」と答えた。そうすると長女は、「この先、もう少し学校を続ける予定なので、よろしくお願いします」と言って笑いながら頭を下げた。長女は看護婦になるつもりで、県立高校の看護科に入った。しかし、今は保健婦になりたいので、その免許が取れる公立の短大か四大への進学を希望して、受験した。まだ最終結果は出ていないが、いずれも他県の学校なので、親元を離れて生活することになりそうだ。
長女が出ていった後、私はふと、何十年か前の自分の卒業した日を思い出した。高校を卒業した日、私は両親に一言でも「ありがとう」と言っただろうか。そんな記憶はどこにもない。大学を卒業したときも、両親に挨拶などしなかった。何という親不孝な息子だったことだろう。
私はパジャマ姿のまま、布団の上で正座して、遅ればせながら、深々と頭を下げた。「おとうさん、おかあさん、ありがとうございました。おかげで無事卒業することが出来ました。私を支えて下さって、ありがとうございました」すでに冥界の人となった父に、私の心の声は届いたであろうか。
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