橋本裕の日記
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2001年04月02日(月) ものを書くということ

 昨日は同人誌「象」の合評会の日だった。以前に所属していた「作家」は月刊誌だったが、「象」は年に3回しか発行しない。「作家」の頃は年に5,6本の小説を書いて発表していたが、今の私にその余裕はない。年3回という「象」のペースが合っているようだ。

 今回私は「白い墓」という短編を書いた。知恵遅れの少女と少年の交情を描いた短編だが、割合好評だった。少女の犬が死んで、少女が狂ったように泣き叫ぶ。そして、最後に、この少女が池に溺れて死ぬ。後半は私の創作だが、前半はよく似た体験をむかし経験している。

 合評会で「何のために書くのか」ということが話題になり、私はこう答えた。人間は長い間生きていると様々な体験をし、感動したり絶望したりする。そして人生についての認識や思いを深める。そうした人生で出会った「感動」を私は他の人にも自分と同じように味わってもらいたいと思って、それをフィクションにして小説に書く。ただそれだけのことで、別にむつかしい理屈があるわけではない。

 人生は四季にたとえられる。20年刻みで、「青春」、「朱夏」、「白秋」、「玄冬」と移り変わっていく。50歳の私はいま「白秋」のまっただ中ということになる。それぞれの時期にそれぞれの人生体験がある。その時代にしか体験できないことを体験し、その感動をヘーゲルのいう普遍的な「経験」にまで深めて、多くの人に共感してもらえる作品として発表できればと願っている。


橋本裕 |MAILHomePage

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