anxious for Heaven

鳥かごなんて、最初からなかった。

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2006年11月03日(金) かまきり
一昨日

玄関ドアの脇、ガスのメーターの上の壁に
一匹のかまきりが掴まっているのを見つけた

小さい頃は平気だったな、と思いつつ
手を伸ばしてみた

危なくない捕まえ方はまだ
身体が覚えているらしい
何も考えずにふと指で捕まえてみた

靴を履いて玄関から出てくる冬寿に
『かまきり!』
と差し出してみた
虫が苦手な彼に『掴むなー!』と笑われた

思い出した
つい一週間くらい前
ちょうどそんな話をしていた


まだ小学校に入る前くらいのとき
父親の会社の草野球を見に行った
小さい私は何を思ったか
『きょうちゃんも出る!』と叫んで
大人用のグローブを右手にはめて
(それじゃボールを投げられないし捕れない…)
一塁ベースのほうに走っていったそうだ
そこで
『きょうちゃんはまだ小さいからダメ』
そう宥められ
(既に何だか痛いな自分…)
むくれた私は報復に
草むらからバッタを捜し出してきて
父親の上司の頭の上に放したらしい
(バッタと報復って繋がりが子供ならではだな)

もちろんそんな記憶はほとんどないのだけど
いかにも自分らしいなあと笑った
冬寿も『簡単に想像できる』と笑っていた

28歳の自分の世界に返ると
『全然変わっていないなぁ』
そう思った

朝は早くて帰りは遅い父親とは
家ではあまり会わなかった
幼稚園児の私に
『パパひさしぶり!』
と言われたんだと父親は語る
確かにあまり会わなかった
稀に父親の帰宅まで起きていたときは
(だいたい日が変わる頃に帰ってきたと思う)
遊んで遊んでと駄々をこねた
相手をしてくれないと本気で寂しがった

今も同じだな
と思う

20年前から成長していない自分もいて
それを否定も肯定もできないけれど
何となく遣る瀬なくなった

かまきりは
『壁にくっついてても、餌がないじゃん』
という理由で
近くの草むらに放した

その姿は
すぐに暗闇に溶けて見えなくなった

手を離す寸前に
一瞬だけ右の鎌を振り上げられて
右手の人差し指に小さな傷を作った

一緒にいられると思ったのは
たぶん、間違いじゃない。
written by:Kyo Sasaki
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