「ガムを食べた。」 DiaryINDEXpastwill
2001年08月22日(水) 迷子

3歳くらいの頃、うちの敷地内に小さな貸家が1件あった。
小さいけど、1階に3部屋、2階に2部屋くらいはあったかな。

若い夫婦である両親を住まわせようと、祖父祖母が建てたらしい。
でも家に比べてあんまり小さいので、母のお里からクレームが入って、
結局両親は住まず、貸家にしてどこかの4人家族が住んでいた。

その家族には、姉と同い年の女の子と、
俺と同い年の男の子(たけしくん)がいて、
それぞれ毎日遊ぶような仲良しだった。


ある日、たけしくんが迷子になった、という騒ぎが起きた。
俺も自分なりに心配になって、三輪車を乗り回してたけしくんを探し回った。
家の周囲、よく遊んでいた神社をキコキコ見回って、
まだ居ない居ないと言っている姉やなんかを見ながら、俺はひらめいた。

少し前に近所の小学生と遊んだときに、
国道の方まで行ったことを思い出したのだ。
小学生が自転車でスイスイ行くのを、
たけしくんと俺は三輪車でひっしこいて付いていった。
あそこに1人で行ったら迷子になるかも知れない、
てか絶対あそこだ、と確信して俺は国道へ向かった。

ところが、キコキコキコキコこいでもこいでもたけしくんは見つからない。
ここら辺だったはず。
何度も同じところをキコキコ行ったり来たりした。
見つからないので、少しずつ範囲を広くしているうちに、
とうとう俺自身が迷子になってしまった。
ミイラ盗りがミイラになったってやつだ。

その事を悟った途端に俺は泣いた。
とにかくワンワン泣いた。
ガソリンスタンドのお姉ちゃんが、溝に落ちた三輪車を引き上げてくれて、
話を聞き出そうとしてもワンワン泣き続けていた。
DQNカップルの車が止まって声をかけてくれたが、
それでも泣き続けていた。
DQNは「泣いてんじゃねぇ!!」と捨てセリフを吐いて去っていった。
当然俺はさらに泣いた。(多分それ以来DQNは苦手だ。)

結局、たまたま通りかかった近所の床屋さんの人に助けられた。
俺が姉の名前入りの長靴を履いていたため、誰だかわかったらしい。
そこら辺は覚えていない。
疲れてタクシーの中で眠ったことくらいしか覚えてない。

それから、三輪車は取り上げられた。
それから数年後、道路の拡張事業のため庭の大半が削られてしまって、
たけしくんの家族も引っ越してしまった。


この迷子になったことをよく覚えているのは、ときどき思うからだ。
俺はいつも、何かに燃えると自分の能力以上のところまで突っ走る。
そしていつも迷子になって途方に暮れてしまう。
この頃からそういう性質を持ってたんだろうなぁって。

今も迷子のまま。
でも、名前入りの赤い長靴も履かないし、
わざわざ声かけてくれる人もいないし、
ワンワン泣くこともしない。

いや、これとは違うけど同じようなことをしてるのかもしれない。

この話は前に書いたことあるようなないような。

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