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『微炭酸ニッキ』  山崎ナオコーラ

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財布紛失!!!
2001年10月18日(木)

会社の内定者の個人面談があっていやいや行く。新宿。
「面接なんかはなんかあれだった、頑張った、けど、
いやあ、ほんと釣った魚に餌はやらないってほんとだね」
とか意味不明な事考えながらいやいや行く。
いやいや行ったけど、担当の人は良い人だった。

「まあでもいやいや行ったんだから、ご褒美に」
なんて思って、スターバックスでキャラメルマキアート飲む。
あっまーい。
でも雨で寒かったから暖まった。
(しかしこれは思えば最後の贅沢だった)

その後、渋谷で4,5限の授業に出て、卒論な、と思って生協で原稿用紙買って、写譜しなきゃってプレ2の譜面を地下で取って来て、
駅まで歩いて、
さて電車で帰ろうとしたら、
財布がない!

中学から使ってきたダヤンの愛着のあるやつで、定期も預金カードも学生証も入ってる。
わーお。

かばんを全部見たけどない。リクルート用の使い慣れてないかばんだから、変なとこにしまったかもと思ったけど。


何度も無くしたけど、いつだって見つかってきたんだ。
今度だって。

でも地下にもない。学生課に聞いたけど届いてない。生協はしまってる。
薄着刑事が捜査してくれた。
また渋谷駅にも戻った。

無かった。
無くなったんだ。

�,い筺△�っとあれだな、きっと財布を拾ったすごくカッコいい男のコは、2,3日後に学生証を見て、財布を持って大学を訪れるだろう。で、中庭に来て、また学生証を取り出しその写真を見る。
すると写真と同じ顔の女の子が現れる。
目が合ったらすぐわかるだろう。このコだって事が。
いや、財布のコだって事じゃない。
ずっと探してたコだって事が。

…ってべたべたな出会いの複線なんだな、これは。

財布が無くなったのは物語の始まりにすぎないと思う。
この物語は私が主人公だし、
私の物語は財布が無くなって始まるんだな。


�△△襪い呂△譴澄�財布は私の身代わりになってくれたんだ。
これから起きるだろう私の危機をかばって代わりに今ひどい目にあってるに違いない。


��あるいはこうだろう。財布は自分の死期を感じ取って、こっそり姿を隠したのだ。
いさぎよい最期である。


�い△襪い呂海Δ�もしれない。私は財布にふられたんだろう。
財布は私に飽きて離れて、私が探し回ってるのも知っててかげから見てたに違いない。私がごみ箱をあさってるのを壁のかげでこっそり見てたんだろう。でも下手に優しくしちゃいけないから、声はかけなかったんだろう。


�ァ嵜誉犬魯咼好吋奪箸隆漫廚箸いΔ�ら、今まずいクッキーを食べた私には、
後の方に美味しいクッキーが残されてるに違いない。
今財布を無くしとけば、もう無くす事はないし、
それに、これから先、他に財布を無くした人に出会ったら、気持ちをわかってあげられる。


��財布が無くなったのは何かの啓示だと思う。
「古い生活は終わったよ」なんていう。
「新しい生活をはじめるのよ」ってなんだっけ。チェーホフの何かか?斜陽の科白か?
とりあえずそんな感じの事じゃないのか。

まあなんにせよ、良い事の始まりな気がする。

そういえば、9月から続いてたローテンションも最近終わったみたいだ。
ほーんと、なんだったんだろう。
ひとりがすきって時期だった。
最近は人と話すのが楽しくなってきた。
なんだか、楽しくなってく予感。


なんかよくわかんないけど、財布の事は別にいいや。

その後、会社にもらった交通費使って、魚食べて帰ってきた。
いや、楽しかった。

一緒に探してくれた方々有り難う。

さよなら、財布。
君の事は、忘れない。




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