Love Letters
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2003年02月23日(日) |
恋する想いは時を超えて… |
時計を見ると、
すでに午後三時を過ぎていた。
京都の伊勢丹で
美味しい湯葉料理を頂いた私達。
お互い、慌しい時間を縫っての一泊旅行だったから、
予定よりずっと遅いランチになってしまった。
「また、今度にしようか?
拝観終了時間、5時だったでしょ?」
11階にあるレストランの大きな窓から、
翳り始める京都の街並みを見つめながら、
私は訊ねた。
「とりあえず、行けるところまで行ってみようよ。
いざとなったら、途中でタクシーを拾うって手もあるし。」
あなたは、
少しだけ落胆していた私の気持ちを
素早く読み取ったようだった。
こういう時のあなたの決断力には
いつも感心してしまう。
私達が向かったのは、「詩仙堂」
ここは、以前から私が大好きだった場所。
大学の頃にも、数回訪れている。
そして、その場所は、
あなたの
早くして亡くなったお父さんと、
お母さんが、
初めてダブルデートした場所でもあった。
その話を聞いて、
行きたい気持ちがますます募ってしまった私。
あなたも同じ想いだったのか、
或いは、
私の子供っぽい願いを叶えようとしたのか、
京都駅から少し遠いけれど、
行ってみようと約束した。
叡山鉄道で一乗寺駅に降り立った頃は、
もう、すでに日が暮れ始めていた。
古い街並みに沿って、白い坂道を登る。
もう何年も訪れたことのない風景だけれど、
少しずつ記憶の片鱗が蘇ってくる。
小さな門をくぐると、
竹林に囲まれた石畳が現われる。
懐かしい風景。
ずっと大好きだった場所。
そして、偶然にも
何十年も前に
愛するあなたの両親が
恋に落ちた場所。
白砂の枯山水と
紅葉し始めたばかりの庭園。
詩仙の間と呼ばれる広間には
中国三十六詩人の肖像画と詩が掲げられていた。
あなたと
広間のお座敷に座って、
美しい庭園を見つめた。
時折、鹿おどしと呼ばれる添水の音が
どこからか木霊する。
外界から隔てられ、
時がゆっくりと流れている。
心が洗われるような雰囲気に圧倒されて、
柄にもなく大人しくしている私を
悪戯好きのあなたは、
いつものように、笑わせようとする。
掲げられた詩のひとつひとつを、
おふざけで即興解釈するあなた。^^
昔々
あなたの亡くなったお父さんも
こうやってお母さんを笑わせたの?
庭園に下りて、少しだけお散歩。
拝観時間終了30分前に
ぎりぎり滑りこんだ私達だったけれど、
おかげで、
ひときわ美しい
夕暮れ時の庭園を見ることが出来た。
庭園から戻る時、
にわか雨に遭遇した。
夕暮れと雨という思いがけないシーンのおかげで、
二つの美しさを満喫できたことに感謝。^^
帰り道は、
ひとつの傘のなか
あなたに腕を絡めて歩いた。
ただ、それだけなのに、
あなたの心が、
とても近くにあるのが感じられた。
「来て良かったでしょ?」
そっと訊ねる。
答えは聞かなくてもわかってる。^^
小夜子
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