Love Letters
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2006年03月30日(木) あなたの声に呼ばれて


 「しばらく待ちそうだな。」

 
 バス停の時刻表と時計を見て、

 あなたが言いました。


 「ちょっとここで待ってて。

  他にもホテルへ行くバスがあるかもしれないから。」


 夜の冷たい風を

 アルコールで火照った肌に受けながら

 あなたを待ちました。

 このシーズン初めて袖を通したスプリングコート。

 昼間は少し汗ばむほどだったのに

 夜はまだ寒さを感じます。




 あなたに会えた日は

 夜になるといつも少し悲しい。

 さよならするまでの時間を

 もう数えてしまうから。

 人が列を作り始めたバス停、

 私達以外は皆

 同じ家に帰る家族に見えました。

 毎日同じ家を出て

 同じ家に帰る家族。

 私達はそんな家をずっと持たないでしょう。

 少し感傷に浸っていたら、

 後ろから私の名前を呼ぶ声がしました。




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 家族でも友達でもなく恋人の名前。

 


 そんなにもはっきりと

 あなたに名前を呼ばれたことはなかったような気がします。

 周囲の人にも聞こえるくらいにはっきりと。

 二人で帰る家はなくても

 私にはちゃんと愛してくれる人がいる…

 そんな風に思える優しい響きでした。



 人ごみの向こうに

 あなたの笑顔が見えて、目が合いました。

 私は温かな気持ちで

 あなたの方へと歩き出しました。



0574 W.S.R

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小夜子

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