わたしも、つい、母の事を話した
アサキは目を丸くして 「だっておまえ、そんな不幸な少女には見えなかったぞ?」
不幸な少女、という言い方が可笑しくて プフッと吹きだしてしまった
机のふちをなぞりながら、 おもいきって言ってみる
「母がいなくなって、じつはホッとしてるの」
「そか… うん、そっか」
アサキは何度も頷くと、本の表紙をみつめた
母が私にだけ厳しかったとか それは話さなくてもいいと思った 不幸とかカンチガイされても困るし
だって いまの、この瞬間のわたしは なにひとつ不幸じゃないもん
こうして 本のにおいのするところで 隣りにはアサキがいて
なにかがいっぱいで いっぱいすぎて あふれそうなくらいだもん
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