姉ちゃんは タカシの前におかわりの皿を置くと よいしょ、 と炬燵布団をひっぱって座りながら
そのアタマ… お兄ちゃんと喧嘩でもしたの? と訊いた
「にーちゃん居ない。女んとこ。」
そっか… と言って福神漬けをすくう姉ちゃん (それで終わるなよっ、もっと訊けよ!)
しばらく スプーンを使う音だけが響いた
たまらなくなったぼくが TVのリモコンに手を伸ばしかけたとき タカシが口をひらいた
「親父。」
「……キチガイだ、あいつ。」
皿を洗うあいだも 吐き捨てるようなタカシのひとことが ずっと耳のなかで鳴っていた
姉ちゃんは どーしても帰る というタカシを玄関先で見送り そのあとは 自分の部屋に入ったきり 出てこなかった
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