2004年07月07日(水) |
酒が売れずに粕が出る |

↑出荷しごろになったタンク内の奈良漬粕
7月にはいり、DMを送った先から中元の発送がちらりほらりと舞い込みはじめましたが、酒販店さんからのお酒の注文はあいかわらず低調です。
ただ奈良漬粕の注文だけは結構あり、一店で4kg詰300個なんて予約をいただいているところもあり袋詰作業に追われています(お酒で一升ビン300本なんて注文は、ここ数年いただいたことがないのにねえ)。
酒粕のことを知らない方が案外いらしゃいますので、きょうは簡単に御説明いたしましょうか。
冬場の仕込み期、お酒のモロミを絞り機で絞りますと酒と酒粕に分離されます。
酒粕は絞り機の濾布(ろふ)に板状にへばりついていますので、これをヘラでかきおとし、適当な大きさに切って袋詰したものが「板粕(いたがす)」というもので、乳白色でパサパサした手触りをしています。これが粕汁の材料として使われるわけです。
お酒を絞るたびに出来る板粕を粕タンクにどんどん入れていき、上から人が踏み込んである程度圧縮し、夏までそのまま貯蔵しておくと、甘味と旨みが増し、黄土色をしたペースト状のいわゆる「奈良漬粕」ができあがります(「踏み込み粕」という場合もあります)。
板粕の中には、お酒の発酵に利用した「液化酵素」や「糖化酵素」が失活せずに残っており、お酒にならなかったお米由来の「デンプン質」もたくさんありますから、春から夏へ気温が上昇していくと酵素活性が増して、デンプン質が溶けていきパサパサした状態からペースト状に変化し、旨みと甘味がでてくるわけです。
塩漬けして水分を抜いた、キュウリやウリといった夏野菜を奈良漬粕につけこむと塩分が粕に移行し、逆に粕のエキス分や甘味が野菜に移って、美味しい奈良漬が出来上がります(土用丑の日に、うなぎ丼をかきこみながら、おいしい奈良漬をポリポリかじるのはたまりませんですなあ)。
ほろよいの地域では、兼業とはいえ農家がけっこうあって、これから夏野菜がどんどん取れてきますので、奈良漬粕の需要が昔からけっこうあります。
最近では大手酒造メーカーがパック酒のような経済酒をたくさん作られますので、昔のような酒粕が十分に供給されなくなっています(お米をなるだけ酒に変えようという考え方で発酵させますので、出てくるのは文字通りの「カス」としかいいようのない代物)。
ごく普通に、昔からの酒造りをしているだけなのに「美味しい酒粕ですなあ」と誉めていただくのは、なんとも面はゆいものです。
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