先日の日曜に受け入れた資源回収の一升瓶を整理していると、見慣れぬビンが
ラベルはありふれた月桂冠ですが、透明ビンは見たことがありません。
よくよくビンを眺めると、ビン詰日が1970年10月19日ではありませんか(かなり以前、日本酒の日付は胴張りの裏に押印しておりました)。
どこにどうして残っていたのやら、今となってみれば日本酒の歴史を語る貴重な資料です。
例えば、胴張りの右下すみに印刷してある「防腐剤を使用しておりません」という文言は、昭和44(1969)年に添加が禁止された「サリチル酸」のことをさしています。
それまではお酒の品質を劣化させる火落ち菌(乳酸菌の一種)を防ぐため添加が認められていたのですが、食品添加物がうるさくいわれはじめたために、人工甘味料の「チクロ」とほぼ同じ時期に禁止されました。これ以後、お酒の殺菌方法は低温殺菌(摂氏65度前後に加熱し冷却する)のみとなっており、防腐剤は一切使用されなくなっています。
●サリチル酸は消化器系に悪い影響を及ぼすために禁止されたのですが、改良されてできた薬品がアセチルサリチル酸(商品名アスピリン)とはトリビアでした(詳しくはココ)。
●月桂冠さんはサリチル酸の添加にはそれ以前から反対しておられ、先見の明があったといえましょう (詳しくは酒文化研究所のHPの中のココの2ページ目)
●地方の蔵元さんもサリチル酸の使用にはいろいろと意見があったようです(詳しくはココのp12〜p15あたり)
お話を級別制度に移しましょう。
これは証紙といって一升瓶の中央に張られるラベルですが、中に入っていたお酒が1級酒であることを示しています。
当時は「特級」「1級」「2級」の3ランクが設けられ、それぞれに酒税が異なっておりました。
現在は級別は廃止され、どんなに高い吟醸酒でも、どんなに安いパック酒でも、1キロリットルあたり120.000円で、1.8リットルで216円となり、お酒の価格に上乗せされています。
例えば1.8リットル1.000円の経済酒は酒税を除くと784円で、この価格でメーカーと卸会社と酒販店がそれぞれマージンを出そうというのですから、製造原価はなんぼじゃい?というお話で、思わず脱線してしまいました。
アルコール分の刻み方も現在は「15.0度以上16.0度未満」といった区切り方ですが、当時は「15.5度以上16.5度未満」という区切りだったようです。
ちなみに、この小判型の証紙は、日本酒造組合中央会の外郭団体である「日邦厚材」というところ(今は柳宗理デザインの清酒グラスなど、日本酒まわりのグッズを斡旋販売しておられます)が、一手に製作して全国の酒造家に販売しておりました。
これは肩張りというラベルで、ここにも清酒一級という表示が大きく印刷されております。
はろよいがこの業界にはいったころ、ご年配の酒販店さんは灘や伏見の大手のお酒を「上(かみ)のさけ」と畏敬をこめてお呼びになり、われわれ地酒は一段低く見られておりました(ほろよいの蔵を含め、かなりの地酒蔵が下請けをやっていたのだからしかたないのですが)。
当時、そして今もなお日本酒業界に君臨する、月桂冠さんのプライドを垣間見せるようなラベルであります。
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