アナウンサー日記
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2001年08月19日(日) |
セミの命とムカデの命 |
自分で言うのもなんだが、私は生き物に対して優しい男である。
基本的に困っている生き物がいたら、必ず助ける。人間はもちろん、車にはねられた猫、ガラスにぶつかって気絶したスズメ、コンビ二に迷いこんだトンボ・・・家の中に入ってきたスズメバチでさえも、殺さずに逃がしてやるくらいだ。
きょう夜、会社から家に帰ってくると、玄関の前にアブラゼミがひっくり返っていた。産卵管があるのでメスだ。夏ももう盛りを過ぎた。寿命で死んだのだろう。それにしても、昆虫とは言え、家の前に死骸が転がっているのは気持ちが悪い。当人も(?)死んだらやはり土にかえりたいだろうと思い、どこか土の上に移動させてやることにする。
ところが、ホウキでそうっとチリトリに載せると、彼女はひっくり返ったまま、弱々しく前足を動かした。まだ生きていたのだ。
困った。このセミの寿命は見るからに尽きかけている。まもなく天に召されるだろう。だが、このまま彼女を土の上に移動させれば、アリか何かの餌食になることは目に見えている。それが自然の摂理と言えば全くその通りだろうが、やっぱり寿命が尽きるその瞬間までは、生き長らえさせてやりたい。
結局私は、玄関前の植え込みの葉の上に彼女を載せた。目立たないように上から大きめの葉を載せてやった。これで、夜が明けても鳥に襲われることはないだろうし、直射日光もしのげるだろう。
そこは街灯で少し明るくなっていて、彼女はきっと、景色を楽しみながら死ぬことができるはずだ。セミの目から見る世界はどのように美しいのだろう・・・と思いつつ玄関をくぐると、今度は「ヤツ」がいた。
「ヤツ」とは、ムカデである。ダークグリーンの体に鳶色の頭をした、トビズムカデ。日本に棲息するオニムカデ類の中では、最もポピュラーだ。毒性は極めて強く、アレルギー体質の人が噛まれると、ショック死することもあるという。体長は15センチに達するとも言われているが、今、目の前にいるのは、10センチほどのサイズの若者だ。
生き物に優しい私だが、家の中に出現したゴキブリと日本脳炎を媒介する蚊、そしてコイツ・・・ムカデだけは別である。2才の子供を噛まれでもしたら、大変だからだ。
私はひとこと「ゴメン」とつぶやくと、ムカデを手早くチリトリに載せ、家の前の道路で殺虫剤をかけた。今度生まれてくるときはムカデになるなよー、などと思ってしまう私は、なんとも罪悪感を拭いきれないのであった。
翌朝、ムカデはもう、殺虫剤をかけた場所にはいなかった。
植え込みのセミを見ると死んでいるようだったので、勇気を振り絞って(虫を触るのは苦手・・・)指でつかんで土の上に載せてやろうとすると、「ブブブ」とわずかに体が振動したのに驚き、落としてしまった。なんとまだ生きていたわけだが、セミの身体は、植え込みの木の途中に引っかかって止まっていた。後味の悪い気分で会社に行き、その夜、植え込みを揺すって、地面に落としてやった。
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