アナウンサー日記
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2001年09月22日(土) |
「太股」を何と読む? |
先ほど、テレビで深夜ニュースを見ていたら、フジテレビのベテラン・Fアナが、「太股」を「ふとまた」と読んでいた。痴漢のニュースだったのだが、Fアナは画面をにらみつけるようにニュースを読みながら、何度も「ふとまた」と連発していた。
もちろん正解は「ふともも」である。普段からそそっかしく、アナウンサーとして常に誤読の不安を抱えているワタシとしては、この手の他人の失敗を見つけるのは結構好きだったりする(←オイオイ・・・)。
だが、今回のFアナの誤読こそ、ワープロ原稿の弊害の典型と言えよう。
何故か?
「ワープロが、何でもかんでも勝手に変換してしまうこと」に、原因がある。普段、一般市民や記者自身が使っているレベル以上の漢字を、ワープロはあっさりと使ってしまうのだ。
例えば、道行く人に紙と鉛筆を渡して、「ふとももって書いてみてください」とお願いすれば、多分、大抵の人が「太もも」か「ふともも」と書くだろう。「太股」あるいは「太腿」と書く人は、少数派のはずだ。
また(シャレじゃないデスよん)私自身、3〜4年前まで記者として原稿を書いていたが、その頃は、まだまだ手書き原稿が主流だった。放送用のニュース原稿を書くときは常に時間との戦いである。当時、各記者は「腿」や「股」のように画数が多くて書くのに時間がかかる面倒くさい漢字は意識的に避け、画数の少ない平仮名やカタカナを多用していた記憶がある。つまり、かつての手書きの原稿には、「太股」や「太腿」といった難しい文字は、あまり登場する機会がなかったように思える。
「ここ数年、ワープロ書きの原稿が増えて読みやすくなった」という意見と同じくらい、「かえって読みにくくなった」という感想がアナウンサー達の間からあがっている。その理由の一端は、こんなところにあるのではないかと思う。
「股」は普通、「もも」とは読まない。「また」と読むのが一般的だ。かと言って、一方で「太股」は、ちゃんと辞書に載っている言葉でもあるので、やはりアナウンサーとしては「ふともも」と、きちんと読みたいものである・・・。
Fアナの失敗は「弘法も筆の誤り」の類であろう。凡人アナウンサーの私にとっては、まさに「明日は我が身」である。
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