今年の東京の桜の開花予想日は、3月26日だと、妹が騒いでいました。 どうやら、お花見に行きたいらしい。 私も毎年花見に行きますが、都内なら新宿御苑の桜が一番好きです。 種類も多いし、樹が伸び伸びとしている気がするので。
ところで、開花を控えたこの時期、桜の樹の幹が、ほんのり桜色がかって見える、 という話をご存知ですか。
昔、教科書かなにかで読んだ記憶があるのですが、未だ冷たい風に揺れる、 冬枯れの桜の樹を注意深く観察してみると、他の木々に比べ、くすんだ幹の焦茶色に、 うっすらと内側から薄紅色が透けて見えるような気がします。 気のせいかも知れませんが、なんだか不思議です。
桜と言えば、梶井基次郎の、「桜の樹の下には」の冒頭。
あの発想が、彼独自のものなのか、それとも元々昔からあったものなのか、 勉強不足の私は、残念ながら知らないのですが、非常に短い作品にも関わらず、 有名無名を問わず、多くの人々が、この作品のモチーフを、桜の時期に口にしたり 文章にするのは、やはり、インパクトがある名文だからだと思います。
梶井基次郎は、繊細な感性が文章から滲み出ている、綺麗な作品が多いですね。 代表作の「檸檬」も、様々な色彩の本を積み重ねたその上に、一際鮮やかな色彩の 檸檬を載せる、というビジュアル的な美しさと、「爆弾」という発想の、無邪気な 病みっぷりが、好き。
猫の耳と前足の話、「愛撫」も好き。 アレを読むと、無性に猫と戯れたくなる。 肉球をムニムニしたり、耳をみょーんと引っ張ったり。
夭逝してしまったのが、つくづく悔やまれる作家の一人です。 そして、あんなに綺麗な文章を書くのに、顔がジミー大西と瓜二つなのが、 とても気になる…。
梶井基次郎といえば、高校の現国の授業中、「闇の絵巻」の解説で、 伊豆湯ヶ島に、病気療養のため逗留中だった梶井が、
夜の川沿いで全裸で号泣した
という話を聞いた覚えがあるのですが、あれは私の聞き間違いなのでしょうか。 それとも心地よい授業中の午睡に見た夢なのでしょうか。
高校時代の現国と文学史の授業は、先生のマニアックな話が印象深くて、他の授業の 記憶はスッポリと抜け落ちているのに(高校に通っていなかったのでは、と自分で疑うほど) あの授業に関してだけは、鮮明に覚えている話がいくつかあります。
三島由紀夫の、市ヶ谷駐屯地での切腹後、介錯されて首が部屋の隅に転がってる写真 (当時の朝日グラフに掲載)や、森鴎外の大好物、葬式饅頭茶漬け (葬式饅頭を冷えたご飯の上に、2つに割って乗せて、玉露のお茶をかける)など。
実生活では、なんら役に立たないことばかり覚えてるのが、痛いところ。
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