■ 日々の歩み。 ■
徒然の考察・煩悩・その他いろいろ発信中。

2003年03月11日(火) 桜の樹の下には。

 今年の東京の桜の開花予想日は、3月26日だと、妹が騒いでいました。
どうやら、お花見に行きたいらしい。
私も毎年花見に行きますが、都内なら新宿御苑の桜が一番好きです。
種類も多いし、樹が伸び伸びとしている気がするので。

 ところで、開花を控えたこの時期、桜の樹の幹が、ほんのり桜色がかって見える、
という話をご存知ですか。

 昔、教科書かなにかで読んだ記憶があるのですが、未だ冷たい風に揺れる、
冬枯れの桜の樹を注意深く観察してみると、他の木々に比べ、くすんだ幹の焦茶色に、
うっすらと内側から薄紅色が透けて見えるような気がします。
気のせいかも知れませんが、なんだか不思議です。

 桜と言えば、梶井基次郎の、「桜の樹の下には」の冒頭。

 あの発想が、彼独自のものなのか、それとも元々昔からあったものなのか、
勉強不足の私は、残念ながら知らないのですが、非常に短い作品にも関わらず、
有名無名を問わず、多くの人々が、この作品のモチーフを、桜の時期に口にしたり
文章にするのは、やはり、インパクトがある名文だからだと思います。

 梶井基次郎は、繊細な感性が文章から滲み出ている、綺麗な作品が多いですね。
代表作の「檸檬」も、様々な色彩の本を積み重ねたその上に、一際鮮やかな色彩の
檸檬を載せる、というビジュアル的な美しさと、「爆弾」という発想の、無邪気な
病みっぷりが、好き。

 猫の耳と前足の話、「愛撫」も好き。
アレを読むと、無性に猫と戯れたくなる。
肉球をムニムニしたり、耳をみょーんと引っ張ったり。

 夭逝してしまったのが、つくづく悔やまれる作家の一人です。
そして、あんなに綺麗な文章を書くのに、顔がジミー大西と瓜二つなのが、
とても気になる…。

 梶井基次郎といえば、高校の現国の授業中、「闇の絵巻」の解説で、
伊豆湯ヶ島に、病気療養のため逗留中だった梶井が、

夜の川沿いで全裸で号泣した

という話を聞いた覚えがあるのですが、あれは私の聞き間違いなのでしょうか。
それとも心地よい授業中の午睡に見た夢なのでしょうか。

 高校時代の現国と文学史の授業は、先生のマニアックな話が印象深くて、他の授業の
記憶はスッポリと抜け落ちているのに(高校に通っていなかったのでは、と自分で疑うほど)
あの授業に関してだけは、鮮明に覚えている話がいくつかあります。

 三島由紀夫の、市ヶ谷駐屯地での切腹後、介錯されて首が部屋の隅に転がってる写真
(当時の朝日グラフに掲載)や、森鴎外の大好物、葬式饅頭茶漬け
(葬式饅頭を冷えたご飯の上に、2つに割って乗せて、玉露のお茶をかける)など。

 実生活では、なんら役に立たないことばかり覚えてるのが、痛いところ。 


 <1つ戻る。  一覧。  1つ進む 。>


まめ。 [HOMEPAGE]