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2003年03月12日(水) 少年に恋した林檎の木の話。

 先日、本屋さんで見かけた絵本。 → こんな本。

 シェル・シルヴァスタインという、米国の有名な絵本作家の作で、原題は
「The Giving Tree」 邦題は「おおきな木」

 サンライズだったかな?中学2年生か3年生の、英語の教科書に載っていて、
2年ほど前、塾講師をしていた頃、空き時間に英語の教科書を眺めていて、原文を
読んだことがあります。

 本屋に置いてあったのは翻訳本でしたが、パラパラっと見た限り、原文の素晴らしさを
伝えきれていないかな、という感じがしたので、是非、原文で読むことをお勧めする一冊。

 子供向けの大変平易な英語なので、義務教育を受けた人なら、問題なく読むこと
ができます。(私ですら読めた)

 内容としては、一人の少年と林檎の木の話。


   少年は林檎の木が大好きで、林檎の木も少年が大好き。
  ところが、成長し世界が広がって行くことで、少年は徐々に林檎の木から離れていく。
  一方林檎の木は、そんな少年を責めることもなく、彼が望むままに、自分の実を与え、
  枝を与え、幹を与え、最後には切り株だけになってしまう。

  切り株だけの林檎の木の元へ、年老い、杖をつく老人となったあの少年がやってくる。
  もう何も彼に与えてあげられるものを持たない林檎の木は、切り株となった
  自分に腰を下ろさせ、人生に疲れた彼に、休息の場所を与える。



 英語が苦手な私が、読みながら切なくなって涙しました。
原文では、林檎の木の三人称が、She で、女性なのですよ。

あれを恋と呼ばずして、なんと呼ぶのか。

 翻訳では、林檎の木が「彼女」であることを、あまり意識させない文章でしたが、
これはれっきとした恋愛小説ですよ。切ないプラトニック・ラヴロマンスですよ。
つれない男とひたむきな女。永遠のテーマだ。

 色々考えさせられる部分が多くて、中学生のガキ共に、授業の片手間に嫌々
読ませるにはもったいない、奥の深い、大人向けの内容だと思うのです。

 イラストも、モノクロの淡々としていながらも、訴えかけてくる絵柄で、最後の
切り株に腰掛ける老人の姿は、哀愁と、人生を全うしたものだけがたどり着く、
穏やかな時間が感じられて、なんともいえない味があります。

 惜しみなく、見返りを求めず少年を愛し続ける林檎の木の姿、無償で注がれる愛に
気付けずにいた少年の姿について、年を取り、経験を重ねていくことで、さまざまな
捉え方ができる作品だと思います。

 よろしかったら、是非ご一読を。


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まめ。 [HOMEPAGE]