先週末借りた、金城武主演のビデオ、「アンナ・マデリーナ」ですが、 想像以上に面白かった。久々にホロリときた。
金城武演じるガーフは、大人しくて冴えないピアノの調律師。 ひょんなきっかけから知り合い、ガーフの家へ転がり込んできた、 モテモテ駄目男・モッヤンは、小説家志望。
自分の魅力にも才能にも自信たっぷりなモッヤン。でも彼の小説は 空白のまま、まだなにも書かれていない。 無限に広がる自分の可能性という才能が、ただの幻想だと知りたくないから。
ある日、彼らの住む部屋の上階に、勝気で美しい、ケリー・チャン演じる、 モク・マンイーが引っ越してくる。 毎日下手な「アンナ・マデリーナ」をピアノで弾く彼女に、ガーフは憧れ、 モッヤンは最初反発しながらも、次第と惹かれあっていく。
引っ込み思案なガーフは、彼女へ伝えることが出来ない想いを 小説にする。自由で無邪気な、2人の男女、○と×の物語。 現実では叶えられなかった、モクとの恋愛、自由奔放な自分を、夢のような 御伽噺の中で描いていく。
ガーフの描く、お世辞にも上手いと言えない、朴訥とした拙い物語は、 しかし余計な装飾がない分、誰もが持っている、恋する甘く切ない気持ちを 普遍的に表しているのですよ。
小説の中、主人公の○と×は、亡霊に頼まれて、かつて彼が愛していた モク・マンイーへ、「愛しているよ」という伝言を伝えなければ いけなくなる。
散々探して、やっと見つけた彼女は、既に亡き人。 しかし、彼女もまた、かつて愛した恋人の伝言に、答えを用意していた。
「ずっと前から判ってたわ。」
想像通りで、なんの捻りもない、少女漫画のような、甘々でお約束 の展開なんですが、グッときた。
誰にも、この世界のどこかに運命の人がいて、だけど、必ずその相手と 巡りあえるとは限らないし、巡り合えても、満足するような結果は 得られないかもしれない。それでも、恋をするのは素敵だ。
誰もが心のどこかで知っていながら、素面で言ったら、こっ恥ずかしいこと この上ない真理でも、こうもストレートに表現されると、思わず頷いちゃうわ。
リリカルって、こういうことを指すのね、という、お手本のような映画でした。
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