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2003年06月07日(土) この星の一等賞になりたいの卓球で俺は! そんだけ!

 とうとう見てしまいました…。ピンポン。

 原作は読んだことがないものの、見たら絶対はまると確信していたので、
1週間レンタルになるまで待とうと公開当時から固く心に誓っていたのですが。

 想像以上によかったです。スマイルが。


 ニコリとも笑わない仏頂面と、神経質なほどの繊細さと、やる気なさそうな
クールさと、映画だというのに聞き取りにくいことこの上ない、ボソボソ小声が、
もう最高だよ。いい!!

 主人公の窪塚演じるぺコが、躁鬱の差はあれ、どうしても一本調子な
勢い演技に終始しているので、内面的な変化と成長を、地味だけど
印象的な場面と科白で、丁寧に追っているスマイルの方が、映画では
完全に主役となっていましたね。

 
 天真爛漫で卓球大好き、実力にも自信を持っているぺコと、
いじめられっ子だった自分に、卓球を教えてくれたぺコを
「ヒーロー」としているスマイル。

 でもぺコは、負けると大泣きするのね。
完全無敵のはずのヒーローは、自分の弱さを認め、
克服していくだけの強さが、まだない。

 ぺコがスマイルの「ヒーロー」として在るためには、そんなぺコの
「弱さ」を彼自身に気付かせてはいけない。

 だからスマイルは、天才的な才能があるのに、絶対にぺコに勝たない。
自分の才能や勝利へ執着を持たず、相手の心情を優先してしまう結果、
他の人との試合でも、わざと負けてしまったりする。

 でも、そういったスマイルの「優しさ」は、スマイルが望まずとも
手にしている才能を渇望し、血の滲むような努力を重ねているライバル達には
もっとも残酷で、傷つけられる行為であり、ぺコの才能をも潰すことになる、
という事実を、ライバルであるドラゴンやチャイナ、顧問の小泉に指摘される。

 さらに、ぺコが幼馴染のアクマに試合で負け、ぶち当たった挫折の壁の前で、
卓球から逃げてしまったことで、スマイルは初めて自分自身の才能と向き合う。

 それまでのスマイルには、「ヒーロー」であるぺコが全てなんだけど、
ぺコが卓球から、スマイルから距離を置いたことで、最初は反目していた
竹中直人演じる、顧問のバタフライ・ジョーと、心の交流が生まれたりして、
世界が広がっていく感じがするのよね。

 スマイルが練習の途中でいきなり逃げ出して、夜になってから体育館へ
戻ると、顧問が待ってて、スマイルを叱るんだけど、最後に「マイ・ボーイ」
って呼びかけるのね。そうすると、それまで心を開かなかったスマイルが、
「マイ・コーチ」って、顧問を呼ぶのよ。ちょっと泣いたね。

 
 卓球から離れていたペコも、あるきっかけから再び卓球の世界へ。
ペコは、「卓球でこの星の一番になりたい」と言う。
それは「スマイルのヒーローである」ことにも直結するのだけど、
「ヒーローになりきれない弱い自分」があることも、ペコは自覚している。

「ヒ−ロー」になりたい。でもそれは難しい。
そんなペコの心の支えは、スマイルの崇拝なんだと思う。
どんな時でも自分を認め、信じてくれている人がいる。
弱さから、ヒーローであることから逃げていたペコが、
初めて自分からヒーローになりたいと思って努力するのね。


 一つ難をいえば、クライマックスの試合の勝敗が、スマイル視点で映画を
見ていた私には、イマイチ釈然としないのですが。

 とにかくペコとスマイルの、言葉にしなくても通じ合う的な深い繋がりが、
後半にいくにつれ顕著になってきて、非常に邪まな見方も出来るし、
忘れかけていた爽やかな青春、って感じの清清しさが光っていました。

 噂に違わぬ作品です。


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まめ。 [HOMEPAGE]