■ 日々の歩み。 ■
徒然の考察・煩悩・その他いろいろ発信中。

2004年04月19日(月) 逢魔ヶ刻の四辻で。

 最近のお気に入りの話。
江戸川乱歩の短編。「押絵と旅する男」

 澁澤龍彦編集の「暗黒のメルヘン」(河出書房)という短編集に
収録されているのを読んだのですが。

 この話、実は映画になっていて、5年くらい前に観たんですが、
こっちはねえ。映像は綺麗なんだけど、なんだかダラダラ間延びしてて、
すんごく眠かった記憶が。(鷲尾いさ子は綺麗だった)
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD28357/comment.html

 小説の方が、絵画的・ビジュアル的といいますか。
読み進めていくと、御伽噺のような現実味の薄い内容と相俟って、
色とりどり、極彩色の映像が、万華鏡のようにくるくると
脳裏に浮かんでは消えていく心持がします。

 極彩色の真ん中には、黒ビロウドの細身の背広を着込んだ
青年とも老人ともつかない男が、白い面で佇んでいる、と。


 まあなんといっても、私がこの話を気に入った理由は、小道具の使い方。

特に、押し絵(覗きからくり)と凌雲閣。

 凌雲閣は、明治23年に浅草に作られた、12階建ての塔。
当時としては画期的な高層建築で、みんなの度肝を抜いたらしい。
一昔前の東京タワーみたいな感じで、観光名所だったようです。
(お土産屋さんや見世物小屋が、たくさん出ていたらしい)
http://www.aurora.dti.ne.jp/~ssaton/taitou-imamukasi/asakusa-12kai.html


 残念ながら、関東大震災で倒壊してしまったので、現存しませんが、
両国の江戸東京博物館で、模型を観たことがあります。


 押絵は、高価な飾り用の羽子板でご存知の方が多いと思いますが、
立体的にふくらみをつけた、布製の絵画。

主に人物画が多く、これに書き割りの背景をつけて箱に収め、
小さなレンズから内部を覗くことで奥行きをつけた立体紙芝居を
覗きからくりというらしい。

 これも実物を一回だけ見たことがあるのですが、やはり
千葉の佐倉市にある国立歴史民俗博物館での展示物で
実際にお祭りなどの見世物としては、現存していません。

 どちらも、現在の私達の生活には全くもって馴染みがないものですが、
だからこそ、日常的空間の中に、突如起こる非日常的・奇怪な出来事の
装置としては、うってつけなんだろうな。


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まめ。 [HOMEPAGE]