NY州在住 <旧『東京在住』・旧旧『NY在住』>
kiyo



 真夜中の愚者達

今どこにいる?
「あー談合坂」

(注:談合坂とは、東京より中央高速道路で約80キロの所にある、首都圏と地方との境のような所の地名。多くの場合、「談合坂」とは、高速道路のサービスエリアを指す。)

 そんな会話を何度したことでしょう?私の記憶が正しければ、3回電話すれば必ず一度は、「談合坂」、「河口湖」、「大月」などの答えが返ってくる。(いずれも山梨県か、それにほど近い地方)

 そんな彼に、プリントアウトを頼んでいたのですが、優しい彼は、私の自宅に持ってきてもらえることに。それが夜中の二時。

 きっと、オープンカーで来ているんだろうと思い、彼を玄関前より連れ出し、じゃ、飲み物買うだけでも、数分だけでも、ちょっとくらいなら、と思って乗り込んでみたのです。はい、薬物も、彼の車も一緒。ちょっとと思ったのが運の尽き。

 なんかさー、このまま富士山麓のあたりの森を走り抜けたら気持ちいいんだろうね?

「うん。相当気持ちいいよ。俺よく行くし」

 じゃ、行こうか?

「おいおい、待て。私今、大月(山梨県)行って帰ってきたところなんだよ?しかも、今午前二時半だぜ?」

 そうだよね。ま、また今度でも。

 っておい?君。どこに行く?ここはもう杉並区ですらないぞ?何故私たちは東八道路を調布方面に向かっているのかね?飲み物を買うのに、もう5キロも走っていませんか?どうした?

「え!?行くんだろ?富士山に。まったくもぉ・・・」

「まったくもぉ・・・」といいつつ、何故か薄ら笑いを浮かべる彼。携帯電話も財布も、靴も靴下もはかず、短パンにポロシャツだけで出てきた私。

 なんて、愚かな。君は、その前の日には、河口湖にいたんだよね?私に会う直前は、大月にいたんだよね?長いつきあいになるが、考えてみれば、彼の人生自体が(これでも来年30才だって!信じられる?)常軌じゃなかった。

 こんな普通人生、普通性格な私を連れてどこへ。

 ところが、オープンカーの助手席でほほえむ私は、中央道に乗ったあたりで「おいおい、巡航130キロ?おかしくないか?150キロ以上で」なんてことを言っている。あー朱に染まる私。

 富士山の麓に到着した私たちは、林道を5合目まで疾走。真っ暗な森の中、高速で、蛇行した道を上っていく。すれ違う車もほとんどいない。途中何度か、ウサギが通りすぎる。ウサギさんたちもさぞかし迷惑なんでしょう。

 富士山、5合目に到着。見上げれば満天の星空。(曇り気味だったけど)そして、富士山頂のほうへは、登山道の街灯が点在。なかなか良い夜だ。なにより静かだ。

 そして、また、下り。横Gに耐えながら、スピードを楽しむ。途中、今度は舗装すらされていない林道に突入。

「今度一緒にラリーやりたいもんだな」

 なんて会話と共に、上下に揺れる車体と、滑るタイヤのスリルを堪能。素晴らしい。林道を抜け、さらに私たちは、富士山麓周辺を右往左往する。 

 少し山麓をかけあがると、夜が明けてくる。眼下に広がる雲海と、ピンク色に染まる空。まだ黒い山の稜線に、くっきりと映える空の色。空に浮かぶ島に来た気分。互いに言葉もない。

 そうか、この風景を見るために、私は今週はつまらなく過ごしていたのかもしれない。

 そう思ってもあまりある朝の誰も知らない山の風景でした。

 少し休憩をした私たちは、今度は未体験の道を進むことに。途中まではきっかり舗装されていたのに、突然、道路が未舗装に。再び土の上を疾走し出すシルバーの車。

「ね?この後引き返す?」

 はぁ( ゚Д゚) 道なんて、私たちには関係ないだろ。

「だよな」

 と一瞬で合意に達するあたりが、非常識学校成蹊学園出身者ゆえだろうか?

 ま、すこし、地図などを確認していると、鹿さんがこっちを見ている。ウサギさんに続き、今度は鹿さんですよ。しかも、あきらかにこちらを凝視している。分かっている。「こんな朝早くからお前ら馬鹿か?」と、本家「鹿」に言われている。

 一応写真撮影をさせてもらう。(ちなみにやっぱりNIKON D70はいいですね。色の多さと映えがコンパクトデジカメには
越えられない壁があります)

 その後も数人の鹿さんたちに遭遇。いずれも馬鹿にされている。

 誰もいない地域を二人で笑い飛ばしながら走った後は、眠気と戦いながら、再び中央道を東京方面へ。ここで温泉入ったら速攻寝るよな?当然だ。やめておこう。なんて会話をしながら私たちは帰ったのでした。当然時速180キロで。セリカの出すスピードじゃないよね。

 帰りの高速道路で、二人で食べたBlack Blackガムのまずさは、恐らく生涯、kawakitaの味として記憶されることでしょう。30才手前の二人の愚行と共に。
 
 心地よい疲労の中、週末のマラソン大会出場に憂鬱になりながら、そして、疲れているのにもかかわらず、二人でまた、ドライブを楽しんでくれた愚かな友人に多少なりとも感謝しつつ、ベッドに潜りこむわけでした。

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2006年07月10日(月)
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