確かに其の瞬間、僕は僕に鍵を渡してくれた人の事が好きでした。

 僕の部屋のでは無い鍵を捨て切れなくて持ち續けて居ます。
 其等の鍵が使用可能であり續ける保證は無いといふのに。

 ある人に貰つた部屋の鍵、僕の名前が彫り込んである指輪、僕の首にぴつたりな大きさの首輪、別れた時に返して貰つた髑髏の指輪、一緒に買つたブレスレツト…僕は未だにどれも捨てられませぬ。
 未練がある譯では無い。唯、捨てられ無いだけ。

 二年前、もう二度と使は無いと決めた鍵が未だにあの扉を開けられる事を僕はちやんと知つてます。
 奴は鍵を返せとは謂ひませんでした。其の謂は無かつた事實に縋り付き續ける僕を嘲笑ひたければ嘲笑つて下さい。

 此の鍵を捨てても奴との繋がりが全て消え失せる譯ではありませぬ。
 一番初めに教へた僕のメールアドレスはまだ生きて居ますし、奴の住所が變つて無いと知つて居ます。
 しかし、此の鍵を捨てたら僕は何かを斷ち切る氣がします。

 どうせ斷ち切るのなら奴の目の前が好い。少しでも奴に衝撃を與えられる樣に。
 確かに鍵を受取つた瞬間、僕は奴の事が好きでしたよ。だからこそ、奴に思ひ知らせて遣りたい事が未だにあるのです。
2002年03月12日(火)
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