電車内
 歸りの電車内で床に頭髮らしき茶色の塊が落ちてゐるのを目撃した。
 序に謂へば其の頭髮らしき物體が妙に慌てふためいて轉がる樣に電車を降りていつた可也年配の御婦人の頭部からひらりと落ちたのも僕は目撃したのだが、餘り深く考へ無い事にした。

 以前友人と飮んで歸つた際に見た奇跡とほぼ同じ光景を今日亦見た。
 奇跡と謂つても大した事では無い。單に發車間際の電車の座席に隣り合つて座つてゐた二人が同時に反對方向を向いて隣り合ふ別々の閉まる寸前の扉から降りただけ。でも、其の光景を見た僕と友人は顏を見合はせて「すごっ!」と叫び「奇跡だ!」「あんな事現實にあるんや!」と暫く驚き續けてゐた。
 今日僕が先日と同樣の光景を見て判つた事は、あの時の僕達は正常な判斷が出來て居ると思ひ込んで居たがさうでは無かつたといふ事。あんな事の何處を如何見て「奇跡」だなんて口々に謂ひ合つて居たのか今では全く理解出來得無い。

 京都で電車通學を始めてから、二日に一日の割合で元彼によく似た人を見掛ける。毎回あの背の高い後ろ姿を見掛ける度に僕は其の姿が視界から無くなる位置までせかゝゝ移動してしまふのだけど、あれは本當に彼では無いのだらうか。
2002年05月28日(火)
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